セッション情報 パネルディスカッション20(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

大腸EMR / ESDの現状と適応

タイトル 内PD20-11:

当院での大腸内視鏡治療選択における待機的ESDの位置づけ

演者 大野 亜希子(NTT東日本関東病院・消化器内科)
共同演者 大圃 研(NTT東日本関東病院・消化器内科), 松橋 信行(NTT東日本関東病院・消化器内科)
抄録 【目的】臨床現場では、EMRで一括切除可能と思われた病変が治療時に切除困難となり、治療を中断し後日ESDを予定し再入院となる事がある。我々は術前診断でEMRでの一括切除が経験的に確実視できない20-30mm大の病変を、事前に説明と同意を得た上で待機的ESD症例と位置付けてきた。大腸ESDが保険収載された今、ESDとEMRの境界病変に対する待機的ESDの位置づけを明らかにする。【方法】2007年7月-2012年2月に当院で大腸ESDを施行し術前内視鏡評価で長径20-30mm大であった299病変のうち、待機的ESDであった42病変(14%)を対象とし、EMR不可と判断した臨床学的理由および治療成績を検討した。【成績】待機的ESD症例の性別は男/女24/18例、平均年齢62.5歳、平均切除長径31.9mm、平均病変長径22.7mm、平均術時間55.6分、一括切除率100%、側方断端陰性率100%、偶発症は穿孔率4%(2例)、後出血率0%であった。部位別内訳はC/A/T/D/S/R(8/11/8/4/2/9)例であり、肉眼型別は隆起型11例、LST-G(M) 1例、LST-G(H) 10例、LST-NG(FE) 14例、LST-NG(PD)6例であった。病理組織の内訳は腺種30例、m癌5例、sm癌7例であった。待機的ESDと判断した理由は、術前因子:襞にまたがる病変12例、局注施行後あるいは生検痕あり3例、生理的屈曲部位(肝3脾2)、スコープ操作不安定3例、術中因子:局注後の膨隆形態不良9例であった。【考察】待機的ESDは全例一括且つ断端陰性切除されていた。我々が待機的ESDを考慮する(EMRで一括切除が確実視できない)理由として、襞にまたがる病変や過去の内視鏡治療の存在、生理的屈曲部位、スコープの操作性等が術前因子として考えられた。一方で局注後の膨隆形態不良のように術中判明する因子があり、術前にEMRかESDかを完全に割り付ける事は難しいと考えられた。【結語】待機的ESDの治療成績は良好であった。技術的に安定した施設において事前にEMRでの一括切除が不確実と想定された場合、待機的ESDを念頭に置く事で良好な治療成績を担保可能であった。
索引用語 大腸, ESD