セッション情報 パネルディスカッション20(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会合同)

大腸EMR / ESDの現状と適応

タイトル 内PD20-12:

治療選択およびその成績からみた大腸ESDの臨床的意義

演者 浦岡 俊夫(慶應義塾大・腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門)
共同演者 岡田 裕之(岡山大病院・光学医療診療部), 矢作 直久(慶應義塾大・腫瘍センター低侵襲療法研究開発部門)
抄録 目的 リンパ節転移の可能性が極めて低いと術前診断されたにもかかわらず、従来のEMRでは技術的に十分な切除が望めない病変が外科的切除の対象となっていたが、ESDの大腸への導入によって、治療方針は変わりつつある。今回、大腸ESDの臨床的意義を明らかにすることを目的に以下を検討した。
方法 検討1:2003年9月~2010年10月の間、当院および関連病院における内視鏡および外科的に切除された20mm以上のLST 425症例434病変のうち、初回EMRが施行されたEMR群150症例152病変と外科的切除されたOPE群49症例49病変を対象とし(SM深部浸潤癌および経肛門的切除を行った5病変を除外)、両群の治療成績をretrospectiveに検討した。検討2:2006年4月~2012年3月の間、大腸ESDが施行された295症例302病変のうち、手技的困難因子(過去の報告から、a. LST(≧50mm)、b. LST-NG、c. EMR後遺残・再発(≧10mm)、d. 術後吻合部上の病変と今回定義)を持つ病変の治療成績を検討した。
成績 検討1:OPE群には、各施設でのESD導入後に、深達度診断を深読みした4病変、近傍の浸潤癌に対する外科的切除範囲内のため同時切除された1病変、患者の手術希望1病変とESD導入期で技術的な理由で外科切除となった3病変が含まれていた。病変存在部位別で、両群に統計学的な差は認めなかったが、平均腫瘍径は、OPE群で有意に大きかった(32.2mm vs. 24.1mm、p<0.001)。LSTの肉眼型別検討では、LST-G(顆粒均一型)がEMR群で多く、LST-NG (陥凹を有する)がOPE群で有意に多かった(p<0.001)。検討2:ESD施行例における手技的困難例は、全体の66%を占め、内訳はa. 23%、b. 36%、c. 7%、d. 1%であった。一括切除率は、a. 91%、b. 96%、c. 70%、d. 67%で、d.の1例に局所再発を認めたが、追加内視鏡摘除で再発を認めていない。穿孔は、a. 0.9%、b. 4%、c. 10%、d. 0%にみられたが、すべて保存的加療にて軽快した。
結論 大腸ESDは、結果的に不要な手術を減らす上で、臨床的意義があると考えられた。
索引用語 大腸ESD, 適応病変