セッション情報 | 一般演題 |
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タイトル | 胸腔内へ全胃が脱出した傍食道型食道裂孔ヘルニアの1例 |
演者 | 黨 和夫(佐世保中央病院 外科) |
共同演者 | 重政 有, 羽田野 和彦, 碇 秀樹, 清水 輝久, 菅村 洋治, 國崎 忠臣 |
抄録 | 食道裂孔ヘルニアは横隔膜ヘルニアのうちの約9割を占める。多くは滑脱型であり傍食道型は10%に満たない。そのうち全胃が脱出するものは比較的稀である。今回我々は、急激なイレウス症状で発症し全胃が胸腔内へ脱出した傍食道型食道裂孔ヘルニアを経験したので若干の文献的考察を加え報告する。【症例】41歳、男性。【既往歴】特記事項なし。【現病歴】平成12年7月19日未明に出張先にて嘔気、嘔吐出現。左胸部痛および背部痛に加え、呼吸困難も出現したため近医入院となる。経鼻胃管挿入による保存的治療にて症状が著明に改善したため、出張先より戻り、待期手術目的にて、7月27日当科外来紹介され受診した。自覚症状は認めなかったが、胸部X線にて左胸腔内に胃泡を認めた。同日午後より、左胸部から腹部にかけての疼痛出現。一時軽快していたが17時頃に再び症状出現し、嘔気、嘔吐出現したため緊急入院となった。【現症】身長165cm、体重42kg。痩せ型である。意識清明。貧血、黄疸なし。チアノーゼも認めない。血圧 106/76mmHg、SpO2 97%、左側胸部に腸音聴取した。【血液生化学検査所見】WBC 14300、RBC 481、Hb 15.7、Ht 47.5、Plt 19.7、CRP 0.0、TP 8.2、Alb 5.0、T.bil 1.5、GOT 18、GPT 13、LDH 353、CPK 96、ALP 262、LAP 62、AMY 40、ChE 146【画像所見】胸部X線:左胸腔内に拡張した胃泡を認めた。胸部CT:左胸腔内に著明に拡張した胃と少量の胸水を認めた。食道裂孔ヘルニア嵌頓イレウスの診断にて経鼻胃管挿入した。挿入翌日には全身状態著明に改善したため待機手術となった。MDL:胃のすべてが左横隔膜上に脱出し、いわゆるupside-down stomachを呈していた。E-C junction (以下ECJ)は横隔膜レベルに存在していた。MRI:食道裂孔と連続し径約4cmの欠損孔を認め、ここより全胃が胸腔内に脱出していた。胃内視鏡:ECJ通過後、高度屈曲のため観察不能であった。以上より全胃が左胸腔内に脱出した傍食道型の食道裂孔ヘルニアの診断にて、8月2日に手術施行した。上腹部正中切開にて開腹した。開大した食道裂孔には十二指腸が存在し、胃は腹腔内には存在しなかった。胃を腹腔内に整復後、NissenのFundoplicationを行った。左開胸となったためトラカールを挿入した。術後のMDLにて胃は正常の位置に復していた。ECJレベルで軽度狭窄を認めたためバルーンによる拡張術を行い、9月5日に退院となった。 |
索引用語 | 食道裂孔ヘルニア傍食道型, 胸腔内全胃脱出 |