抄録 |
大腸ESDおよびEMR・EPMR病変の比較検討から見た適応区分、ならびに一括切除困難な穿孔危険例に対する安全な治療法を開発したので報告する。【対象・方法】対象は大腸ESD375例(男222例、女153例、平均66.9歳)384病変、およびEMR・EPMR 4,363病変(以下同)で、1)一括切除率と遺残再発率の比較と適応区分、2)偶発症発生率の比較、3)穿孔危険例に対する手技(LECS: Laparoscopy endoscopy cooperative surgery )、を検討した。またEMRの適応は2cm以下で推定深達度M-SM1(Pit:VI軽度、NBI:type C1 or IIIAまで)、2cm以上の腺腫はEPMR、ESDは大腸ESD標準化検討部会案を適応原則とした。【結果】1 )大腸ESD384の内訳はLST:293、I型:77、陥凹型:14、平均:31.9mm、一括切除258 (93.2%)、分割切除26で遺残再発はない。粘膜下の線維化は77に認め一括切除は60(77.9%)と低下、17例は剥離完遂困難で最終的に分割切除された。非線維化例307の一括切除は298(97.1%)で有意に良好であった。他方EMR(4,041)・EPMR(352)は大きさ10mm以下:2,718,11-20mm:1,343,21mm以上:302、肉眼型はI型:1,017,LST:1,248, 陥凹型:99,SMT:140, 遺残再発:23であった。以上の治療後の遺残再発はEMR:24, EPMR:25の49病変(1.1%)で、LST:35(71.4%)であった。大きさ別では10mm以下:5/2,718(0.2%), 11-20mm:23/1,343(1.7%), 21mm以上:21/302(7.0%)と21mm以上で再発が多い。2)ESDの偶発症は穿孔:1(0.26%)、出血:2(0.52%)で、EMR・EPMRは穿孔:8(0.18%)、出血:32(0.72%)で有意差はない。3)以上の成績から、一括切除困難で穿孔が危惧される高度線維化例に対するLECSを開発し、2例に局所全層切除を行ったが安全で適正な治療が可能であった。【結語】大腸ESDの適応はスネアーで一括切除不可能な推定深達度M-SM1の病変、および局所遺残再発病変で、偶発症発生率はEMR・EPMRと同等であった。また、ESD一括切除が困難な高度線維化等の穿孔危険例では、LECSにより安全な適正治療が可能となった。 |