セッション情報 シンポジウム1.

食道・胃接合部腺癌とパレット腺癌の新展開

タイトル

S1-06 Barrett食道におけるfatty acid synthase発現の意義

演者 石村典久(島根大学医学部第二内科)
共同演者 高橋芳子(島根大学医学部第二内科), 天野祐二(島根大学医学部附属病院光学医療診療部)
抄録 【目的】Fatty acid synthase(FAS)は腹腔内脂肪髄肝脳などに存在するcarb()・hydrateから脂肪酸を合成するprimary enzymeであるが近年FASが胃大腸などの固形癌に強く発現し悪性度及び予後を規定する因子と報告されているさらに胃の腸上皮化生での発現も報告され前癌状態への関与も示唆されている.我々はこれまでにFASがBarrett食道の発生・発癌に関与している可能性を報告してきた今回Barrett食道・Barrett腺癌におけるFAS発現の意義及びFAS発現に対する逆流胆汁の関連性について検討しBarrett食道の病態生理の解明を試みた.【方法】検討1:2004年1月~2006年12月の期間に内視鏡及び病理検査で特殊円柱上皮を伴うBarrett食道と診断され1年後に再検査を行った209例を対象としFAS発現の背景因子を内視鏡所見及び免疫組織化学的所見を含めて検討した.検討2:2007年6月~10月における内視鏡施行60症例で逆流胆汁組成とBarrett食道の有無の関連について検討した.同症例での生検食道粘膜を用いてFASmRNAの発現レベルを評価し他因子との関連についても検討した.検討3:食道腺癌細胞株を用いてt各種胆汁添加によるFASの発現状況の変化を検討する.またFAS阻害剤の投与による増殖能への影響も評価する.【成績】FASはBarrett食道の52.6%に発現し逆流症状CDX2・腸型ムチンの発現PCNA indexと正の相関を呈しapoptosis indexと負の相関を示した.一方組織障害性を示す5組成の胆汁酸比はBarrett食道有で4.47無で3.49とBarrett食道の有無に有意に関与しBarrett食道生検粘膜でのFASの高発現が証明された.現在食道腺癌細胞株におけるFASの発現状況を検討中であるが組織障害性を示す5組成の胆汁添加によりFASの発現充進を認めている.さらにFAS阻害剤投与により増殖能が抑制される結果を得ている【結論】Barrett食道の発生およびBarrett腺癌の病態には逆流胆汁の組成及びFASの発現が深く関与する可能性が示唆された
索引用語