セッション情報 シンポジウム1.

食道・胃接合部腺癌とパレット腺癌の新展開

タイトル

S1-09 胆汁酸受容体アンタゴニストによるバレット食道および食道腺癌発生の抑制

演者 山田貴教(浜松医科大学内科学第一講座)
共同演者 大澤恵(浜松医科大学内科学第一講座), 伊熊睦博(浜松医科大学内科学第一講座)
抄録 【はじめに】パレット食道および食道腺癌の発生には胃酸と胆汁酸の食道逆流が関与すると考えられている.H2拮抗剤やPPIは胃酸分泌抑制に有効であるが胆汁酸による粘膜障害に関わる薬物治療は知られていない胆汁酸の粘膜障害機序を分子レベルで捉える事は新たな治療・予防の方策を探ることに結びつくと考えられる.近年核内受容体である胆汁酸受容体(FXR)の発見以降FXRを介した胆汁の生理活性が新たに示されている.一方y食道上皮の腸上皮化生には転写因子Cdx2が重要な働きを担っていると考えられている我々は食道・胃接合部腺癌とパレット腺癌の発生におけるFXRの関与を明らかにし更には薬物療法の可能性を探るため食道腺癌細胞株を用いFXRを介した胆汁酸によるCdx2の発現制御につき検討した【方法】食道腺癌細胞株としてBic-1を用い比較対象として食道扁平上皮癌細胞株KYSE-7Q大腸癌細胞株Caco-2を用いた.胆汁酸としてケノデオキシコール酸(CDCA)デオキシコール酸(DCA)コール酸グルコケノデオキシコール酸負荷時のCdx2発現をimmunoblot analysisにより比較検討し更にFXRアンタゴニストのguggUlsteroneの効果を検討した【結果1(1)FXR発現は全細胞株で認められた.(2)食道腺癌細胞株Bic-1では大腸癌細胞株Caco-2に比較して低レベルのCdx2発現を認め食道扁平上皮癌細胞株KYsE-70では発現を認めなかった.(3)Bic-1ではFxRと親和性が高いとされるCDCAおよびDCAの暴露によりCdx2発現はそれぞれ濃度依存性に増強を示した.(4)guggulsteroneはCDCAおよびDCAによるCdx2発現増強を濃度依存性に抑制しまた胆汁酸非存在下でもCdx2発現を抑制した.【考察】胆汁酸がFXRを介してパレット食道および食道腺癌の発生過程に重要な役割を果たす可能性が示されたFXRがパレット食道および食道腺癌に対する化学予防的治療chemopreventive therapyのターゲットとなりうることが示唆された.
索引用語