抄録 |
炎症性吉凶患慢性化永続化にIL-7依存性腸炎惹起免疫記憶リンパ球の骨髄腸管恒常的循環の重要性を報告してきた.本研究では炎症性腸疾患治療戦略として腸管局所制御ではなく腸炎惹起免疫記憶リンパ球の全身循環制御を目指した新規免疫調整剤スフィンゴシン1一リン酸(2-arnino-2一(2一[4-oc-tylphenyl]ethyl)一13-propanediol hydroehloride[FTY720])を用いた新規分子治療基盤の確立を目指す.クローン病類似慢性腸炎マウスにおいて腸炎惹起免疫記憶リンパ球が腸管のみならず腸間膜リンパ節胸管末梢血骨髄に存在し慢性大腸炎マウスの剛体結合(パラビオーシス)手術による検討でも腸炎惹起免疫記憶リンパ球は腸炎慢性期においても恒常的に再循環していることを明らかとした.興味深いことに同様のタイプの(腸管指向性の)エフェクター・メモリーCD4+リンパ球がヒト潰瘍性大腸炎患者に対する白血球除去療法によって選択的に除去されていることも明らかとした.以上のことから慢性大腸炎維持には腸炎惹起免疫記憶リンパ球の恒常的再循環自体が病態維持に必須であるとの仮説を立てスフィンゴシン1一リン酸受容体制御によるリンパ球循環遮断能を有するFTY720投与の慢性大腸炎モデルでの効果を検討した.結果FTY720投与によって腸炎惹起免疫記憶リンパ球誘発性慢性大腸炎モデルマウスでの腸炎惹起免疫記憶リンパ球の循環を遮断しt著明に腸炎発症を抑制した.さらにリンパ節脾臓欠損マウスにおいてもFTY720投与は骨髄への腸炎惹起免疫記憶リンパ球の取り込みを促進し(骨髄へ封じ込め)腸炎を抑制することを明らかとした。以上の一連の結果より恒常的に腸炎惹起免疫記憶リンパ球が骨髄も含め全身を循環すること自体が腸炎慢性化永続化に必須でありその遮断システムであるFTY720が新たな炎症性腸疾患の治療ストラテジーとなりうることが示唆された.(FTY720:Novartisより供与) |