セッション情報 シンポジウム5.

炎症性腸疾患:分子標的療法の新展開

タイトル

S5-02 アデノシン受容体をターゲットとした炎症性腸疾患に対する治療法

演者 長沼誠(慶應義塾大学医学部消化器内科)
共同演者 小林拓(慶應義塾大学医学部消化器内科), 日比紀文(慶應義塾大学医学部消化器内科)
抄録 【目的】近年炎症性腸疾患に対するシクロスポリンインフリキシマブの有効性が報告されているがこれらに反応しない難治例も存在する細胞表面にあるアデノシン受容体などのGタンパク質共役型受容体は免疫細胞の免疫抑制性cAMPレベルを上昇させることにより抗炎症効果を発揮ことが報告されている.今回我々はアデノシン受容体の1つであるA2A受容体(A2AR)アゴニストによるT細胞樹状細胞(DC)産生炎症性サイトカインの抑制効果および腸炎抑制効果について検討した.【方法】1)C57BL/6またはA2AR欠損マウスの脾臓腸管膜リンパ節骨髄よりCD4+T細胞CDllc+細胞を抽出し抗CD3抗体LPS刺激下でA2ARアゴニスト(ATL313)を添加しサイトカイン産生表面抗原の変化を検討した.2)C57BL/6に3%DSSを5日間自由飲水させDSS投与3日前よりATL313含有の餌を与え8日目のATL313投与群と非投与群の腸炎を比較検:産した.3)cD4+cD45RBhiT細胞を腹腔内に投与しo46週後よりATL313を投与し(餌)7週目の腸炎を比較した.【結果】1)CD4+T細胞産出IFNyTNFαL-2DC産出二一12TNFαは容量依存的にATLにより抑制されたが(蛋白RNAレベル)A2AR欠損マウスでは見られなかった、 T細胞産生IL-10はATLにより変化はなかったがDC産生IL-10はATLにより平均13%上昇した.ATLによりDCにおけるCD80CD86+細胞の減少が認められた.2)ATL313投与によりDSS腸炎の抑制は認められなかった.3)CD4+CD45RBhiT細胞による腸炎はATL313投与(4週後より投与した群)で腸炎の抑制がみられ腸管組織および腸管膜リンパ節TNFαRNAレベルも抑制された【結語】A2ARをターゲットとした治療は炎症性腸疾患特に慢性期に対する新しい治療になる可能性が示唆された.
索引用語