セッション情報 シンポジウム5.

炎症性腸疾患:分子標的療法の新展開

タイトル

S5-04 HO-1誘導による実験腸炎の抑制とその分子機構

演者 中道郁夫(九州大学・病態機能内科学)
共同演者 松本主之(九州大学・病態機能内科学), 飯田三雄(九州大学・病態機能内科学)
抄録 【目的】我々は炎症性腸疾患治療に対する新規標的分子としてヘムオキシゲナーゼー1(HO-1)に着目しヘミンを用いてマクロファージにHO-1を誘導することでDSS腸炎が軽症化することを報告している.この際にTh1に分化誘導するIL-12のサブユニットp40の分泌とSTAT1シグナルが抑制されていることを示したがさらに分子機構を明らかにする必要があると考えられた.【方法】マクロファージ由来のRAW264.7細胞にヘミンまたは溶媒を添加して培養しmRNAの発現量をマイクロアレイにて網羅的に比較検討した.またSTAT1のIL-12分泌への影響を検討するためSTAT1ノックアウトマウスの腹腔マクロファージを用いてELISAをおこなった.【結果】マウスの全遺伝子を対象にして確実に減少したと思われる遺伝子群をパスウェイ解析した結果IFNシグナルが著明にGM-CSFシグナルなどが有意に抑制されていることが示唆された.IL-12p40分泌に対するIFN一こ口効果をRAW264.7細胞のELISAで検討すると通常のLPS刺激では11.7±0.7pg/mlのところLPSとIFN一γの共刺激では284.3±16.1p虹mlとなり約20倍もの分泌量となった.またSTAT1ノックアウトマウスの腹腔マクロファージを用いたIL-12p70のELISAではヘテロのマク回ファージに比べてLPS一単独刺激で約1/2LPSとIFN一・yの共刺激で約1/100の有意な減少を認めた.【結論】ヘミンによりマクロファージ系細胞で誘導されたHO-1はIFN一γの下流であるSTAT1シグナルの抑制を介しIL-12分泌によるTh1型腸炎への進展を抑制することが考えられる.今後はこの分子機構を応用した炎症性腸疾患の再燃予防が期待される.
索引用語