セッション情報 シンポジウム5.

炎症性腸疾患:分子標的療法の新展開

タイトル

S5-05 Cyclooxygenase-2阻害によるcolitic cancer chemoprevention

演者 井上拓也(大阪医科大学第二内科)
共同演者 村野実之(大阪医科大学第二内科), 樋口和秀(大阪医科大学第二内科)
抄録 【背景】潰瘍性大腸炎(UC)には様々な合併症がみられるがその中で長期経過例における癌およびdysplasiaの発生は頻度も高く晩期合併症として重要な問題と考えられている.一方でCyclooxygenase-2(COX-2)の発現は腫瘍の増殖進展に関与する可能性が示唆されておりヒトでは背景粘膜に慢性炎症を有さない通常の大腸腫瘍においてCOX-2選択阻害剤は腫瘍抑制効果に大きな関心がもたれている.【目的】潰瘍性大腸炎のモデルであるマウスDSS腸炎を用いDSSを反復投与することにより発癌モデルを作成しCOX-2選択阻害剤の影響について検討した.【方法・結果】7週齢の雌性BALB/cマウスに2%or 5%DSSを7日間自由飲水させ続く14日間の休薬を1サイクルとし4サイクル繰り返した後120日間休薬させ204日後に屠殺し大腸腫瘍の発生を病理学的に検索したところそれぞれ6.7%28%に癌およびdysplasiaの発生がみられた.またBromodeoxyuridineを用い各サイクル終了後の標識率を検討したところ腫瘍発生を認めたmiddle~distal colonにかけて標識率の上昇が認められサイクルに従って増加していた.つぎにCOX-2選択阻害剤(nimesUlide:NIM400ppm)を飼料に混合し5%DSS投与群に対して実験開始から終了まで(全期間投与群)4サイクルの間(前期投与群)DSS投与後の120日間(後期投与群)の3群に分けて投与を行ったところCOX-2阻害剤投与群はいずれも腫瘍発生率・腫瘍径ともに減少傾向にあり後期投与群では有意に発生率が抑制されていた(6.7%).COX-2発現度は癌およびdysplasiaで有意に増加し非頚部背景粘膜においてもCOX-2発現度および粘膜内prostaglandin E2量は増加していたがCOX-2阻害剤投与群ではいずれも減少傾向を認めた.また8-OhdG陽性細胞数は非虫部背景粘膜で増加しておりCOX-2阻害剤投与群では8-OhdG陽性細胞数の減少およびapoptotic indexの増加を認めた.【結論】同モデルにおいてCOX-2選択的阻害剤は腫瘍発生率・腫瘍径をともに抑制する傾向を認めた.
索引用語