セッション情報 シンポジウム9.

ウイルス肝炎・肝癌に対する生体防御

タイトル

S9-03 HCV Core抗原NS3蛋白によるTLR2を介するCross Toleranceの誘導

演者 鄭浩柄(近畿大学医学部消化器内科)
共同演者 渡邉智裕(京都大学医学部消化器内科), 工藤正俊(近畿大学医学部消化器内科)
抄録 【目的】HCVは宿主の感染防御機構を逃れ持続感染を引き起こすがその機序は不明である.HCVの構成蛋白であるCore抗原NS3蛋白がTLR2 ligandとして機能することが最近明らかになった.予めTLR2を活性化された抗原提示細胞では引き続いてTLR ligandsで刺激しても活性化が認められずその効果はTLR2のみならず様々なTLR ligandsに及ぶことが知られている(Cross Tolerance).本研究においてはHCV Core抗原NS3蛋白がTLR2を活性化することでCrossToleranceを誘導するかどうか検討した.さらにこの現象が慢性C型肝炎において果たす役割について検討した.【方法】検討1:健常者由来樹状細胞(DC)をCoreNS3にて前刺激した後にCoreNS3TLR21igand(PGNPAM3SCK4)TLR41igand(LPS)にて再刺激しその産生するサイトカイン(IL-6皿一8)を測定した.検討2:C型慢性肝炎および肝硬変患者計17例より分離した末梢血単核球(PBMC)をCoreNS3TLR2 ligandTLR4 ligandにて刺激しその産生するサイトカインを測定した.【結果】検討1:予めCoreNS3にて刺激された健常者DCでは刺激を受けなかったDCと比べTLR2のみならずTLR4を活性化した場合でもIL-6IL-8の産生が著明に低下した検討2:C型慢性肝炎PBMCではTLR2及びTLR4刺激によるIL-6IL-8の産生が健常者またはB型肝炎患者と比べ有意に低下していた.C型慢性肝炎PBMCにおいてサイトカイン産生量と血小板数との問に有意な正の相関を認めたがB型慢性肝炎PBMCではサイトカイン産生量と血小板数との間に相関を認めなかった.【結謝予めHCV Core抗原NS3蛋白で活性化された抗原提示細胞はTLR2だけではなくTLR4に対しても不応性を示す(Cross Tolerance現象).慢性C型肝炎患者の抗原提示細胞は絶えずCore抗原NS3蛋白で刺激されていることから抗原提示細胞のTLR刺激への反応性が低下し感染防御機能が低下していることが示唆された.
索引用語