セッション情報 シンポジウム9.

ウイルス肝炎・肝癌に対する生体防御

タイトル

S9-08 NK細胞による肝癌認識機構の分子機序の解析と新規治療法の探索

演者 竹原徹郎(大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学)
共同演者 甲賀啓介(大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学), 林紀夫(大阪大学大学院医学系研究科消化器内科学)
抄録 【目的】腫瘍などの“自己細胞の異常”に対する生体の認識および防御機構の発動はN’K細胞に発現するNK:レセプターが標的細胞上のMHC関連抗原発現をモニターすることによりなされている肝癌に対する生体の認識機構を明らかにしこれを標的とした治療法を探索するためにNKレセプターとそのリガンドの発現制御の視点から研究を行った.【方法】肝疾患患者におけるNKレセプター(活性化レセプターNKG2D抑制レセプターNKG2A)の発現をFACS解析した.NKG2DリガンドであるMHC class 1-related chain A(MICA)のヒト肝癌組織細胞株での発現を免疫染色およびFACSにて解析した肝癌認識におけるNKレセプターの意義をin vitro培養系にて検討した. MICA-NKG2D活性化システムを阻害する可溶型MICAを肝疾患患者の血清からELISA法にて検:出したMICAの発現を促進しその分泌を阻害する薬剤についての探索を行った.【結果】ヒトNK細胞による肝癌細胞株の認識・反応性はNKG2Aからの抑制シグナルとNKG2Dからの活性化シグナルのバランスにより規定されていたC型肝炎・肝癌患者ではNKG2A抑制レセプターの発現急進NKG2D活性化レセプターの発現低下がみられ肝癌に対するNK細胞の反応性は低下していた肝硬変肝癌患者では可溶型MICAの血清濃度が上昇しておりNKG2Dの発現低下に寄与していた.肝癌に対する治療的介入は血清中の可溶型MICAの濃度を低下させNK細胞のNK:G2D発現を上昇させた。肝癌細胞からの可溶型MICAの分泌には金属要求性のプロテアーゼが関与しており抗癌剤処理によりMICAの発現とこのプロテアーゼの発現低下によるMICAの分泌阻害がみられた.【結論】肝癌に対する生体防御のfirst lineにおいてNKレセプターとそのリガンドの発現は重要な意義を持っており各種の治療介入を行うことによりその病態を改善させることができると考えられる
索引用語