セッション情報 パネルディスカッション1.

消化器領域におけるゲノム解析の現状と展望

タイトル

PD1-03 ヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)感染による特定遺伝子のメチル化と低転写の関与

演者 中島健(国立がんセンター中央病院内視鏡部)
共同演者 牛島俊稚(国立がんセンター研究所発がん研究部), 山下聡(国立がんセンター研究所発がん研究部)
抄録 【目的】H. pylori as染は胃粘膜DNAメチル化異常を強く誘導しH.pylori陰性者での胃粘膜DNAメチル化レベルは胃がんリスクと相関する[Maekita et al.Clin Cancer Res.12:9892006Nakajima et aLCancer Epidemiol Biomarkers Prev15:23172006].しかし胃粘膜DNAメチル化異常が特定の遺伝子に誘発されるのか否かまたその機序は不明である.本研究ではメチル化異常誘発の遺伝子特異性と特異性へのmRNA発現レベルの関与を明らかにする.【方法】DNAメチル化は胃癌患者・健常者のそれぞれH.pylori陽性・陰性例(各11症例4群)の非がん粘膜について解析した.胃癌細胞株においてメチル化される48遺伝子[Yamashita et a1Cancer Sci.97:642006]のメチル化をmethylation-specMc PCRにて解析した.遺伝子転写は健常者H.pylori陽性5例陰性6例の胃粘膜についてreal-time RT-PCRにより解析した.【結果】H.pylori感染の関与によりメチル化を受ける遺伝子群(S群:27遺伝子)と受けない群(R群=9遺伝子)が存在した.その他の12遺伝子のメチル化は胃癌の有無と相関した.S群はR群に比べて胃粘膜での転写レベルが総じて低かった(P<O.005).解析した32遺伝子中10遺伝子(31%)はH.pylori感染によりさらに転写レベルが有意に(PくO.05)低下したのに対し上昇した遺伝子は認めなかった.【結論】H.pylori感染によりメチル化される標的遺伝子の存在が明らかになった.胃粘膜でのmRNA低転写レベルとH.pylori感染によるさらなる低下がメチル化感受性を高めていると考えられた.
索引用語