セッション情報 パネルディスカッション1.

消化器領域におけるゲノム解析の現状と展望

タイトル

PD1-06 過敏性腸症候群のセロトニン受容体3遺伝子多型

演者 福土審(東北大学大学院医学系研究科行動医学)
共同演者 相引理沙(東北大学大学院医学系研究科行動医学), 水野資子(東北大学大学院医学系研究科行動医学)
抄録 〔目的〕過敏性腸症候群(BS)に遺伝の関与があることが双生児研究から明らかにされている.遺伝子の中でセロトニン関連遺伝子はIBSのストレス反応を規定する遺伝子の候補である.われわれはセロトニントランスポーター遺伝子多型がIBSを含む個体の不安・うつに関連することを報告して来た一方目測トニン受容体は脳腸双方に豊富に発現しているが中でも5-HT3受容体の拮抗薬が欧米でIBSに使用されている.しかしその遺伝子多型は分析されていない.われわれは5-HT3A(HTR3A)及び5-HT3B(且TR3B)遺伝子多型がBSに関連するという仮説を検証した.〔方法〕対象はRome H基準を満足するBS 120名対照229名である.肘静脈から採血しt末梢血リンパ球を分離しDNAを抽出した.DNAをPCR法によって増幅した後restriction frag皿ent length poly・morphism法によって遺伝子多型であるSNPを検出した.さらに情動と失感情症傾向をPerceived-Stress Scale(PSS)State-Trait Anxiety Inventory(STAI)rSelf-rating Depression Scale(SDS)およびToronto Alexithymia Scale(TAS20)で評価した.〔結果〕IBSと対照の間にはHTR3A(A1596G)の多型差はなかった.しかしHTR3Bについては日電にrs10502180(T/Gp;0.02)ならびにrs1176744(A/Cp=0、03)の有意なアリル頻度差が見られた.すなわちIBSにおいてrslO502180のGアリルが低頻度rs1176744のCアリルが高頻度であった.また状態不安の群間差(p=O.021)rs3782025(T/C)多型効果(p = ODO4)が有意でありTアリルが不安に関連した. TAS20の感情認知困難の群間差(p=0.0001)HTR3A多型効果(p=O.003)群X多型交互作用(p=0.005)が有意でありG/Gが失感情症傾向に関連した.〔結論〕HTR3B遺伝子多型がIBSと不安にHTR3A遺伝子多型が主に失感情症傾向を介してBSに関与することが示唆された.IBSの治療薬の標的分子の遺伝子多型がIBSに関連することがはじめて示されたことからこれを機能解明へと進めるさらなる研究が有望である.
索引用語