セッション情報 パネルディスカッション1.

消化器領域におけるゲノム解析の現状と展望

タイトル

PD1-08 B型及びC型慢性肝炎から肝癌の進展に関わる網羅的遺伝子発現解析

演者 本多政夫(金沢大学医学系研究科消化器内科)
共同演者 堀本勝久(産業技術総合研究所生命情報工学研究センター), 金子周一(金沢大学医学系研究科消化器内科)
抄録 【目的】我々はこれまでに慢性肝炎肝癌の網羅的遺伝子発現解析を報告してきた.今回これらの遺伝子発現情報を有機的に結びつけるアルゴリズムを用いて慢性肝炎から肝癌発症に関わる遺伝子群の解析を試みた.【方法】B型慢性肝炎37例(CH-B)B型肝癌17例(HCC-B)及びC型慢性肝炎35例(CH-C)C型肝癌17例(HCC一一C)を用いた.マイクロアレイはln house-liver chip 10Kを用いた.各群において発現上昇・低下する遺伝子を選出し階層クラスターを行った最適クラスター数はVIF(variance of in且ation actor)を用いたstopping ruleにて決定した。クラスター内の発現平均プロファイルを算出し各クラスター間の関係を偏相関係数にて検討した偏相関係数の高いクラスターは真の因果関係を有することからクラスター間を結びグラフ化することでパスウェイの構築を試みたまたHCC-B及びHCC-Cの遺伝子クラスターと強い偏相関を有するCH-B及びCH-Cの遺伝子クラスターを同定した.【成績1HCC-Cは発現上昇する4つの遺伝子クラスターと発現低下する5つの遺伝子クラスターから構成されていた発現上昇クラスターはそれぞれ細胞増殖群t間質系細胞接着群免疫応答群腫瘍マーカー群でありリンパ球や間質で主に発現する遺伝子が多くを占めた.発現低下クラスターは殆どが代謝関連遺伝子であり主に肝細胞で発現していた.これらの遺伝子発現と密接に関連するC且一Cの遺伝子クラスターはケモカインを中心とした炎症に関わるクラスターであった.HCC-Bの遺伝子発現はHCC-Cと異なり細胞増殖群が多く免疫応答群が少ない傾向が認められたまたHCC-BはCH-Bの炎症に関わる遺伝子群の他肝細胞で主に発現する機能未知の遺伝子群と強い関連性を示した【結論】Bioinformaticsの手法を用いてB型肝癌及びC型肝癌の遺伝子発現の違いを明らかにした.肝癌の遺伝子発現に関連する非田部組織の遺伝子群の同定は肝癌の診断や治療に有用と考えられる.
索引用語