セッション情報 パネルディスカッション1.

消化器領域におけるゲノム解析の現状と展望

タイトル

PD1-11 切除不能膵癌に対する超音波内視鏡下生検(EUS-FNA)標本を用いた遺伝子発現解析の有用性

演者 重川稔(愛知県がんセンター消化器内科)
共同演者 山雄健次(愛知県がんセンター消化器内科), 仲田文造(大阪市立大学大学院腫瘍外科学)
抄録 【目的】EUS-FNA標本を用いた遺伝子解析にて切除不能膵癌に対する抗癌剤感受性や予後の予測が可能かどうか検討した.【方法】当院にて2004年11月~2007年5月にEUS-FNAを施行した膵腫瘤性病変243例中95例に本検討用標本の採取を試みた.穿刺針は22G19G針を使用した.標本からRNAを拍出後RT-PCRにてcDNAを作成し133種の薬剤感受性関連遺伝子および転移・浸潤関連遺伝子を網羅したcustom・ized DNA arrayを用いてRNA発現を検討しRNA量はhouse keeping geneに対する相対量で表した.今回対象としてはgemcitabine(GEM)を2クール以上投与できた切除不能膵癌とした.画像診断上PRまたはSDかつCA19-9値が50%以上低下した症例を奏効群とし残りを非奏効群とした.またGEM感受性関連代謝酵素のmRNA(CDADCDDCKENTIENT2NT5RRMIRRM2)発現の各々の平均値をcutoff値とし各mRNAの高・低発現群間で比較検討した【成績】EUS-FNAによるRNA採取率は81/95(853%)RNA平均量は〔).80±0.18pgであった.81例中35例が検討対象であり残り46例の内訳はGEM2クール未満14例他治療13例他疾患3例緩和医療8例不明8例であった.GEM奏効群非奏効群のMSTは429日225日であった(p冨00016).高・低発現群問の比較検討ではGEM-resitstantに働くNT5において低発現群はMST延長を認めた(p=0.0118).遺伝子発現が81例の平均値+標準偏差以上に高発現しているものあるいは平均値一標準偏差以下に低発現しているもののうち感受性増強に働くものを+1低下に働くものを一1としGEM-sensitiveに働くDCK・ENTIGEM-resitstantに働くDCDを用いて各症例毎にスコア化しその合計値とGEM奏効の関連を検討した.合計値+1以上を奏効と予測した場合感度特異度t正診率は67%86%80%であった.【結論】EUS-FNA標本を用いた遺伝子解析は切除不能膵癌に対するGEM感受性予後の予測に有用である可能性が示唆された.今後他の薬剤感受性や副作用発現頻度の予測なども検討していきたい.
索引用語