セッション情報 パネルディスカッション2.

高齢者における消化器疾患の治療

タイトル

PD2-13 高齢者肝癌患者に対する生命予後改善とQOL維持を目指した治療法選択

演者 保坂哲也(虎の門病院肝臓センター)
共同演者 小林正宏(虎の門病院肝臓センター), 池田健次(虎の門病院肝臓センター)
抄録 (目的)治療法の進化により肝疾患患者の高齢化が進んでおり以前よりも高齢者肝癌患者が増加してきている.今回我々は高齢者肝癌患者のこれまでの治療成績を元に予後改善とQOL維持を目指した治療法選択を検討した.(方法)1990年目2006年に当院で初発の肝癌と診断され治療を行った75歳以上の症例116例を対象とし治療法別の予後および治療法の妥当性について検討した(結果)(1)対象の背景因子は年齢の中央値は78歳(75~88歳)男性:女性=60:56と比較的女性の症例が多くHCV陽性例が101例(87%)とC型関連が大部分を占め肝障害度はA:B:C=40=66=10でChhd-Pugh分類ではA:B:C=92:20:4と肝機能良好例が多かった.鵬因子については腫瘍径の中央値は23㎜(8~1%mm)で単発例が77例(66.7%)であった.(2)治療の内訳は根治的治療が52例(外科切除8例局所療法44例)でTACEを行った症例は64例であった.(3)全体の累積生存率は1年:90.7%t3年:55.5%5年:30.8%であった.腫瘍径30mm以下腫瘍個数3個以内の症例に限ると治療法別の累積生存率は根治的治療1年:95.0%3年:69.7%5年;43.0%であったのに対してTACEでは1年:9Z1%3年二533%5年=26.3%と根治的治療がやや累積生存率が良い傾向にあったが統計学的な有意差はなかった(p=O.174).(4)さらに腫瘍径20mm以下腫瘍個数1個の症例に限ると累積生存率は根治的治療1年:95.8%3年:76.9%5年:51.O%であったのに対してTACEでは1年:100%3年:3&1%5年:12.7%と根治的治療の方が累積生存率が良い傾向にあった(p=0.065).(5)どの治療群においても予後QOLに影響を及ぼすような重篤な合併症を認めなかった.(結語)高齢者肝癌症例では若年例に比べTACE例が根治的治療例に近い生存率を示したが腫瘍因子の良好な例に限れば根治的治療例の予後が良好であった.高齢者においてはそれぞれの症例の肝機能合併症ADLを考慮に入れて治療法を選択すべきと考えられた.
索引用語