抄録 |
肝硬変の病態はきわめて複雑多岐にわたり総括的な診療ガイドラインはいまだ存在しない.作成にあたってはクリニカルクエスチョンごとに系統的に検索した文献データベースを整理しエビデンスレベルの高いものをもとに推奨文をまとめるというのが基本方針である現在まで集計できた検索論文総数は英文6653和文2503で委員が関連論文と判断しデータベース作成を検討した論文数はそれぞれ英文817和文182でこの他にハンドサーチによる追加論文が各委員とも少なからずありこれらをすべて包含する検索式の調整を要する総じて致死率の高い末期肝硬変では生死をかけたランダム化対照試験(RCT)への参加を患者家族に要請するのは困難な状況にある.わが国で得られたエビデンスを最大限取り入れたいと意図したがわが国でのRCTの乏しさは如何ともしがたく肝硬変の病態や薬物に対する反応性における欧米患者との差異を意識してエビデンスレベルの低い経験則も含めざるを得ない現実にある.具体的な問題としてわが国では食道胃静脈瘤の内視鏡的治療は出血時のみならず出血予防の目的でも行われ硬化療法がその主軸をなすが欧米では出血予防のためには門脈圧降下剤が投与され出血後に内視鏡的結紮療法が多用されるという差異がある.また腹水肝性脳症の治療に関するエビデンスレベルの高い研究はわが国には少なく欧米の治療法が踏襲されているものの日本人に適した薬用量に関する検討はなされていない.現在推奨文を1)肝硬変の血液・画像診断2)抗ウイルス療法原因療法3)合併症の診断と治療4)肝硬変進展抑制5)予後判定と肝移植などを中心にまとめつつある.現今の診断・治療手技に関するエビデンスの有無を明らかにして内外のエキスパートの臨床経験も織り込んで完成をめざしたい |