| 抄録 |
【目的】我々は自然免疫の認識機構であるToll-like receptor(TLR)9のリガンドである非メチル化CpG DNAがマウス実験腸炎の発症を抑制することを示しTLR9を介して産生される1型IFNが腸炎抑制効果を持つことを明らかにした.また腸管上皮においてもTLR9シグナル伝達がホメオスターシスの維持に働くことを明らかにしたし今回はTLR9を介する自然免疫の活性が腸炎の回復過程に与える影響について腸炎モデルを用い検討したので報告する.【方法1マウス実験腸炎としてデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)腸炎を用いた(1)C57BL/6(WT)マウスおよびTLR9“f一マウスに7日間DSSを自由飲水させた後中止しマウス体重の改善について検討した.(2)前述マウスにDSSを継続して与え生存率を検討した.(3)前述マウス間のキメラマウスを作製しCpGを投与後DSS腸炎を誘導し腸炎抑制効果の差異を検討した.(4)CpGの投与群と非投与群においてDSS腸炎腸管上皮のアポトーシスについてTUNEL assayにより検討した【結果】(1)TLR9+マウスにおいてWTマウスと比較し体重回復の遅延が認められTLR9シグナル伝達が粘膜修復に必要であることが想定された(2)TLR9+においてDSS腸炎による生存率の低下が認められた.(3)WTマウスの骨髄を移植したTLR9日号キメラマウスにおいてはCpGによる腸炎抑制効果が認められず一方TLR9-/一マウスの骨髄を移植したWTキメラマウスにおいてCpGによる腸炎抑制効果が認められたことよりCpGが直接腸管上皮に働く可能性が高いと考えられた(4)CpG投与群においてはDSSによる腸管上皮のアポトーシスが抑制されていた.【結論】TLR9を介するシグナル伝達経路は腸管粘膜の修復に必要であることが示された.以前に報告してきたTLR9シグナル伝達を介する1型IFNの腸炎抑制効果との関連については検討中であるが今後のCpG DNAを用いた炎症性腸疾患の粘膜修復治療の可能性が示唆された.(この研究はカリフォルニア大学サンディエゴ校Eyal Raz教授の協力にて行った) |