セッション情報 パネルディスカッション6.

小腸疾患の病態解明:基礎と臨床の接点

タイトル

PD6-01 NSAIDs起因性小腸傷害モデルにおける粘液の動態に関する検討

演者 岩井知久(北里大学病院消化器内科)
共同演者 市川尊文(北里大学病院生化学), 石原和彦(北里大学病院生体制御生化学)
抄録 【背景と目的】近年小腸病変がこれまで考えられていた以上に多いことが明らかになりつつあり中でもNSAIDs起因性小腸傷害の予防・治療法の確立が求められるようになった.今回NSAIDsによる下部消化管傷害の好発部位t発症から治癒過程までの経過を主要な防御因子である粘液に着目して粘液の動態と抗ムチンモノクローナル抗体を用いた免疫染色法にて評価することを目的とした【方法】8週齢の雄性Wistar系ラットにIndomethacin(IM)10mg/kgLoxoprofen(LOX)40mg/kgAspi血(ASP)300mg/kgを皮下投与し24時間後3日後7日後における小腸の傷害部位を肉眼的に評価すると共に粘液量の変動を測定し粘液の分布や性状の変化を抗チンモノクローナル抗体で免疫染色することにより評価した.【結果】ASP投与ラットでは肉眼的潰瘍の形成は確認できなかったが一部粘膜の発赤が認められた.IMLOXによる傷害は腸間膜付着側の中部小腸(空腸下部から回腸上部)で最も強く縦走する打ち抜き潰瘍を形成した.総懸液量は薬剤投与1日後の時点では一過性に減少したが3日後にはコントロールと比べて有意に増大した.なかでもシアロムチンを認識する抗ムチンモノクローナル抗体であるHCM 31陽性粘液の増大が顕著でその後傷害の治癒と共にコントロールと同程度まで減少した.またスルポムチンシアロムチンはそれぞれ同一の杯細胞から分泌され粘膜表層においては互いに交わることなく層状に存在しており興味深い事実であった.【結語】抗ムチンモノクローナル抗体を用いた免疫組織化学的評価と粘液量の変動を組み合わせることでNSAIDsによる下部消化管の粘膜傷害と回復過程の評価が可能と考えられた.また粘膜保護薬などの併用による傷害の予防治癒促進効果についても検討を加えたい
索引用語