セッション情報 |
パネルディスカッション6.
小腸疾患の病態解明:基礎と臨床の接点
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タイトル |
PD6-08 大腸全摘術後残存小腸の「大腸化」の機序
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演者 |
福島浩平(東北大学胃腸外科) |
共同演者 |
神山篤史(東北大学胃腸外科), 佐々木巌(東北大学胃腸外科) |
抄録 |
大腸全摘回腸肛門(管)吻合術は潰瘍性大腸炎と家族性大腸腺腫症に対する標準術式である.下痢などの大腸欠落症状と回腸嚢炎は術後QOLと密接に関連し病態の理解と適切な治療が求められる.我々は残存小腸上皮の適応現象と腸内細菌叢の経時的変化についてヒトおよびラットの大腸全摘モデルを用いて検討を行った.その結果術後の適応現象の中心は残存小腸上皮細胞の形質変化であり1.大腸全摘術後の血中アルドステロン(Ald)値の上昇2.上皮細胞におけるepithelialsodium channel (ENaC)11b-hydroxysteroid dehydrogenase type 2(11b-HSD2)prostasinsodium/glucose cotransporter 1(SGLT-1)の誘導と活性化が生じることを明らかにした.また血中濃度を上昇させることなく回腸粘膜局所でのAld濃度を高めることを目的にAld含有ポリ乳酸製剤を開発しENaC各サブユニット11b-HSD2prostasinの誘導と粘膜における起電性ナトリウム吸収の増大を示した.一方回腸痩と健常成人の糞便をコントロールとして回腸嚢の腸内細菌叢の術後経時的変動を細菌DNAを用いたTerminal Restriction length poly-morphysm法にて検討すると本来小腸に存在した細菌が減少し一部の(すべてではない)大腸に好んで生息する細菌の増殖が認められた.しかもいずれも培養困難菌であった.以上より大腸全摘術後の適応は機能分子の誘導に基づくミネラルコルチコイド作用の活性化が関与し新しいDrug delivery systemの応用によりこれを増強することが可能であることまた腸内細菌叢も「大腸化」し培養困難菌がその変化の主体であると考えられた.とくに後者の結果は従来の培養法による研究では解明し得なかった事実であり(潰瘍性大腸炎では本来病変のない回腸に生じる)回腸嚢炎発症との関連が注目される. |
索引用語 |
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