セッション情報 パネルディスカッション6.

小腸疾患の病態解明:基礎と臨床の接点

タイトル

PD6-13 小腸構造理解を目指した小腸マッピングによる遺伝子発現解析

演者 土屋輝一郎(東京医科歯科大学消化器病態学)
共同演者 岩嵜美智子(東京医科歯科大学消化器病態学), 渡辺守(東京医科歯科大学消化器病態学)
抄録 【目的】小腸粘膜は4種類の細胞より構成され消化吸収だけでなく免疫調節機構生体防御機構恒常性維持機構など多彩な機能を有するがそれぞれの機能の区別・制御機構やtその破綻による病態理解が全く進んでいない状況である.小腸構造においても空腸と回腸にて明確な好発疾患の相違があるにもかかわらず両者の基礎的な構成原理は全く解明されていない.そこで今回我々はダブルバルーン内視鏡を用い生検にて全小腸のマッピングを行い部位別の遺伝子発現を詳細に解析することで構造・機能制御を理解し最終的には病態理解への接点とすることを目的とした【方法】全小腸のうち空腸を2区域回腸を3区域に分類し内視鏡にてそれぞれ生検を行う.全小腸を生検しえた5症例計25サンプルについて病理学的検討及びRNA抽出による遺伝子発現解析を行った.それぞれの区域において分泌型細胞分化に必須のHath1杯細胞形質マーカーMucin2バネート細胞形質マーカー’ Human Defensin 5(HD5)吸収上皮形質マーカーLactaseについて発現検討を行った.【結果】病理学的検討においては空腸に比し回腸に杯細胞が多く認められた.遺伝子発現解析ではLactaseは空腸から回腸に徐々に減少し逆にMucin2Hath1は回腸にて増加していた.HD5は全小腸にて一定の傾向であった.また現在IBD患者の生検検体の解析及びその他分化関連遺伝子に関しても発現解析を開始している.【結論】生検にて同一個体での小腸部位による差異を解析しえた.空腸では吸収上皮細胞回腸では杯細胞が多くバネート細胞は一定であることが機能的にも確認できさらにHath1はバネート細胞杯細胞の分化に必須であるが回腸でのHath1遺伝子増加は杯細胞分化に関与することが示唆された.以上から生検マッピング解析は小腸の構成・機能制御を理解しさらに病変部の生検組織と比較することで病態を基礎的に理解できる接点となることが期待される.
索引用語