セッション情報 |
パネルディスカッション6.
小腸疾患の病態解明:基礎と臨床の接点
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タイトル |
PD6-17 パイエル板の拡大内視鏡観察と臨床的意義
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演者 |
磯本一(長崎大学第二内科) |
共同演者 |
宿輪三郎(長崎大学第二内科), 水田陽平(長崎大学第二内科) |
抄録 |
【目的】終末回腸には腸管関連リンパ組織最大のバイエル板(P板)が存在する.P板には絨毛に被覆されないドーム領域があり表面にM細胞が分布し取り込んだ抗原情報を樹状細胞に伝達する.本研究ではP板の拡大内視鏡観察炎症性腸疾患との関連性を検討した.【対象と方法】研究1:腸管病変のない健常者140例のP板形態を内視鏡観察して(藤倉らの分類)年齢分布を調べた.拡大形態観察をインジゴカルミンコントラスト法クリスタルバイオレット染色法NBIを用いて行った.生検材料を用いて走査電顕による超微細形態を観察した。研究2:クローン病7例(平均26歳)ベーチェット病8例(平均50歳)潰瘍性大腸炎18例(平均36歳)のP板拡大内視鏡観察を行い形態変化や生検の病理組織学的検討を行った.【結果】研究1:10-20歳代は隆起が目立つLF型が75%にみられたが30歳代で移行し40歳以降は平坦なLA型が93%を占めた拡大観察でP板のドーム領域が視認でき特に染色法でドーム領域をより鮮明に観察できた.NBI併用拡大観察ではドーム領域と絨毛の血管網パターンに差異を認め識別が容易になった.走査電顕でドーム領域に表在するM細胞を同定した.研究2:クローン病6例(86%)でP板にびらん・潰瘍を認めた.拡大観察でドーム領域の不整がみられ幾つかのびらんはドーム領域内にみられたが栄養療法後4例で改善していた.同部の生検で非乾酪性肉芽腫が86%に同定された.ベーチェット病7例(88%)でもびらん・潰瘍が認められドーム領域に一致:した病変もあった.潰瘍性大腸炎ではびらん4例発赤2例がみられた.プレドニゾロン投与後にP板の退縮やドームの減縮がみられた.LF型の頻度は100%(クローン病)13%(ベーチェット病)50%(潰瘍性大腸炎)であった.【結論】P板の拡大内視鏡観察でドーム領域内の炎症性腸疾患の微小病変が認められ電顕でM細胞が同定可能なことから炎症性腸疾患の病態解明に向けた粘膜免疫学的研究に応用が期待される.研究1の形態観察は動画を用いて供覧したい. |
索引用語 |
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