セッション情報 パネルディスカッション21(消化器外科学会・消化器病学会合同)

局所進行膵癌に対する治療戦略

タイトル 消PD21-1:

局所進行膵癌に対する治療成績の検討-borderline resectable症例とresectable症例の比較から-

演者 青木 琢(東京大・肝胆膵外科)
共同演者 渡谷 岳行(東京大附属病院・放射線科), 國土 典宏(東京大・肝胆膵外科)
抄録 【背景・目的】局所進行膵癌(borderline resectable症例)に対しては、切除と化学療法の併用による成績向上が模索されているが、化学療法のタイミングやレジメンに関し、定まった方針は確立されていない。当科では、膵癌発見後可及的速やかに切除を行い、術後原則としてGemcitabine(GEM)を用いた補助化学療法を行う方針を2002年以降とっており、さらに2008年以降は自己活性化γδTリンパ球を用いた免疫療法も併施している。今回その成績をresectable症例との比較から検討した。【方法】膵頭部通常型膵癌のうち、術前CT画像での詳細な検討が可能であった93例を対象とした。手術は、上腸間膜動脈周囲神経叢右半の郭清を伴う膵頭十二指腸切除を行った。術前画像を放射線科医師に再検討していただき、AHPBAの基準に従い局所進行度別にresectable群(R群)とborderline resectable群(BR群)に分けた。2群の予後を、補助化学療法の有無と併せて解析した。【結果】全症例の5年無再発生存率、全生存率は24%, 43%と良好であったが、術後のステージングは、stage III 42例, IVa 26例、IVb 11例であり、必ずしも症例の選別により予後が良好となっている訳ではなかった。R群、BR群でリンパ節転移の頻度に差は認めなかったが、ステージはBR群でより進行している傾向が見られた(P=0.06)。一方、R群、BR群の予後に有意差は認めなかった。予後良好な群を検討すると、術後GEM投与を受けたBR群の予後がGEM非投与群に比し極めて良好であった(5生率65%)。一方、R群ではGEM投与、非投与による無再発生存率、全生存率の差は認めなかった。術後免疫療法の上乗せ効果は明らかではなかった。【考察・結語】BR群に対する術後GEM投与は予後延長に寄与すると考えられ、術後補助化学療法施行のみでかなりの効果を示すと考えられた。一方今回の検討ではresectable症例に対する術後GEM投与の効果が明確でなく、術前療法や術後の集学的補助療法の検討が必要であると考えられた。
索引用語 膵頭部癌, 補助化学療法