セッション情報 パネルディスカッション8.

肝癌再発進展阻止を目指して

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PD8-05 血管新生因子VEGFを標的とした肝癌再発抑制:ACE阻害剤ビタミンK併用療法の臨床的検討

演者 吉治仁志(奈良県立医科大学第三内科)
共同演者 野口隆一(奈良県立医科大学第三内科), 福井博(奈良県立医科大学第三内科)
抄録 【目的】我々はこれまでに主要な血管新生因子であるVEGFが実験的肝発癌過程において重要な役割を果たしていることを報告してきた(He-patology 3915172004など).今回はVEGF抑制作用を有するACE阻害剤perindopril(ACE-1)および肝発癌抑制作用が期待されるビタミンK(VK)を用いACE-1とVK併用投与による臨床的肝癌再発抑制につき作用機序を含めて検討した.【方法】ラジオ波焼灼療法などで内科的に治療し各種画像診断にて根治し得たと判断した肝癌患者25例を対象とした.書面にて同意を得た後VK(45mg/day)+ACE-1(4mg/day)を連日投与し累積肝癌再発率について対照群と比較検討した.VK+ACE-1投与1年後の血清中の血管新生因子の変化につきProtein ArrayおよびELISAを用いて解析すると共にlatent cancer cellの指標とされているAFP-L3の変化についても検討した.【結果】42ヶ月までの観察においてVK+ACE-1投与群の累積肝癌再発率は対照群に比し著明に抑制されていた(p<0.01)なお30ヶ月までの検討で各薬剤単独投与群では有意な再発抑制は認められないのに対して併用群では有意な再発抑制効果を示した(p<0.01).投与1年後のProtein Arrayによる検討で対照群ではVEGFが増加する一方VK+ACE-1投与群では著明に低下していた.血清VEGFをELISAで測定したところ対照群では投与前後でVEGFが32%増加していたのに対しVK+ACE-1投与群では26%減少していた.AFP-L3に関してもほぼVEGFと同様の推移を示した.【結論】VKとACE-1併用投与はVEGFおよびAFP-L3低下を伴う肝癌再発抑制効果を示したことからVKとACE-1併用投与によるVEGFを標的とした肝癌再発抑制の可能性が開かれたと考える.
索引用語