セッション情報 パネルディスカッション8.

肝癌再発進展阻止を目指して

タイトル

PD8-12 レチノイド核内受容体RXRαを標的分子とした肝細胞癌化学予防-非環式レチノイドとclonal deletion-

演者 清水雅仁(岐阜大大学院消化器病態学)
共同演者 森脇久隆(岐阜大大学院消化器病態学)
抄録 【背景・目的】発癌刺激に曝された肝全体から癌の芽(clone)を除去すること(clonal deletion)は肝発癌予防における有効な手段である我々は今までレチノイド核内受容体RXRαのリン酸化修飾による機能不全がヒト肝発癌に強く関与していることまたRXRαを分子標的とする非有式レチノイド(ACR)が臨床研究において肝癌再発予防効果を示したことを報告してきた。今回我々は1.リン酸化修飾がRXRαの二量体形成能に及ぼす影響および2.レチノイドと抗HER2抗体であるトラスツズマブおよびレチノイドとビタミンK2(VK2)の併用化学肝発癌予防の有効性について検討した.【方法・結果】1.リン酸化型RXRαを発現させた細胞ではRAR/RXRの転写活性および2量体形成能が低下・喪失していること反対に非リン酸化型RXRαを発現させることでこれらの異常が著明に改善・回復することがRARE/RXRE reporter assayFRET assayおよび免疫沈降Western Blotを用いた実験で明らかとなった.2.ヒト肝癌細胞株HLF細胞をレチノイドとトラスツズマブにて併用処理したところ相乗的なHER2RXRαErkAktStat3タンパクのリン酸化抑制とapoptosisの誘導および腫瘍細胞の増殖抑制が認められた.VK2もACRとの併用処理によって相乗的なRXRαタンパクのリン酸化抑制と肝癌細胞増殖抑制効果を示した【考察】RXRαのリン酸化修飾を解除してその機能を回復し異型cloneに分化誘導・apoptosisを誘導するACRは肝発癌予防においてclonal deletionを実践する薬剤と考えられた.またRXRαのリン酸化に関与する分子を標的とする薬剤とACRによる肝発癌・再発に対する相乗的かつ効果的な併用化学予防の可能性が示唆された.
索引用語