セッション情報 ワークショップ4.

消化管腫瘍の分子生物学的診断と治療

タイトル

W4-05 HB-EGF-CTFを分子標的とした新しい胃癌治療の可能性

演者 志村貴也(名古屋市立大学消化器・代謝内科学)
共同演者 片岡洋望(名古屋市立大学消化器・代謝内科学), 城卓志(名古屋市立大学消化器・代謝内科学)
抄録 [目的]最近の分子標的治療の進歩において上皮成長因子レセプター(EGFR)の抑制は最も注目されている分子標的のひとつでありEGFRを標的とした様々な薬剤が開発され一部臨床応用されているしかし胃癌に対しては現在までに満足できる効果をもち臨床的承認に至った分子標的治療薬はない.EGFRのリガンドの一つである細胞膜貫通型増殖因子HB-EGFは細胞外ドメインが切断(shedding)され活性化されると残された細胞内ドメイン(C末端フラグメント;HB-EGF-CTF)が細胞膜から核内へ移行し増殖に関連した分子を制御していることが報告された.今回我々はHB-EGF-CTFの核内移行抑制による胃癌細胞増殖への影響を検討した.[方法]異なるレベルのEGFRを発現する2種類の胃癌細胞(NUGC4MKN28)を使用した. Cetuximabを投与しEGFRリン酸化を抑制するとともにHB-EGFのsheddingを抑制するKB-R7785投与しHB-EGF-CTFの核内移行抑制による上乗せ効果を検討した. Cetuximab単独群とCetuximab+KB-R7785併用群にて細胞増殖抑制アポトーシス細胞周期cycl 1 Ac-mycの発現を検討した.[結果]蛍光免疫染色にてKB-R7785の投与でHB-EGF-Cの核内移行が抑制されることを確認した.両胃癌細胞においてEGFR発現レベルにかかわらずKB-R7785濃度依存的に有意な細胞増殖抑制効果を認めG1期での細胞周期の停止が誘導された. Cetuximabに高濃度のKB-R7785を併用することによりNUGC4細胞において軽度のアポトーシス誘導がみられたが他ではKB-R7785投与による胃癌細胞のアポトーシス誘導はみられなかった.KB-R7785投与によるHB-EGF-CTFの核内移行抑制により。-myccyclin Aの発現低下が確認された.[結論]現在注目されているEGFRのリン酸化抑制だけでなくHB-EGF-CTFの核内移行を抑制することが胃癌細胞増殖抑制に重要であり新しい分子標的となりうると考えられた.
索引用語