セッション情報 ワークショップ4.

消化管腫瘍の分子生物学的診断と治療

タイトル

W4-08 緑茶カテキンの大腸癌細胞増殖抑制の新規メカニズム~脂質ラフトでのEGFR pathwayの阻害~

演者 足立政治(岐阜大学消化器内科)
共同演者 Bernard I.Weinstein(コロンビア大学医療センター), 森脇久隆(岐阜大学消化器内科)
抄録 近年大腸癌を含めた各種癌において受容体型チロシンキナーゼ(RTK)の発現異常があり緑茶カテキンであるEGCG((一)一epiganocatecl血一3-gallate)がこれらの受容体の異常活性を抑制することが多数報告されている.しかしその詳細な作用機序については未だ分かっていない.一方脂質ラフト(1ipid raft)は細胞膜上のドメインでepidermaI growth factorreceptor(EGFR)などのRTI(を含む膜タンパク質を集積し膜を介したシグナル伝達などに重要な役割を;有する機能ドメインとされている.そこで我々は多彩な機能を持つEGCGの真の標的を見出すためこのhpidraftに着目した.まずEGCGはEGFのEGFRへの結合を強く抑制しさらにEGFRのダイマー形成を阻害することが分かった次に脂質アナログであるDiIC16 stainillgおよびcold Triton X-100によるfraction assayを用いた結果ヒト大腸癌細胞HT29SW480においてEGCGはlipid raft構造を著しく変化(ラフト面積の著明な減少)させEGFRが本来の活性化の場であるlipid raftを失うことによりリン酸化が抑制されていることを見出した.また人工脂質二重膜を使った実験においてもEGCGが劇的な変化を引き起こすことも併せて報告した(Adachi S et alCancer Res2007).さらにEGCGは膜EGFRのinternalization(内在化)を起こしEGFからの刺激を回避させる機能を持っていた.他のRTKもlipid ra ftと密接に関わっていることが報告されておりEGCGがこのlipid raft構造を変化させることでさまざまなRTKの内在化を惹起し活性化を抑制するのではないかと推測している.EGCGがlipid raftを標的とし多彩な現象を引き起こすという概念はEGCGの新しい作用機序を提唱するものでありEGCGの臨床応用を考える上で大変興味深いと思われる
索引用語