セッション情報 ワークショップ5.

消化管癌の自然史を見直す

タイトル

W5-05 内視鏡経過例からみた胃癌の発育進展の検討-大腸癌との比較初期像からの発育進展の推測-

演者 長浜孝(福岡大学筑紫病院消化器科)
共同演者 松井敏幸(福岡大学筑紫病院消化器科), 槙信一朗(福岡大学筑紫病院消化器科)
抄録 検討項目:1)累積早期胃癌率:大腸癌との比較2)臨床病理学的因子別の累積進展率の比較.対象:内視鏡的に6ヵ月以上の経過観察が可能であった早期胃癌症例86病変(遡及例75病変追跡例11病変初回検査で病変が指摘できない例最終型4型例は除外).方法:初回内視鏡検査から終回内視鏡検査までの期間を発育観察期間と定義.発育観察期間中にM癌→SM2以深癌SM2癌→MP以深癌に進行した例を進展例進行しなかった例(M癌→MSM1癌SM2癌→SM2癌)を非進展例とした.1)累積早期胃癌率を求め大腸癌経過例39病変の累積早期癌率と比較した.2)初回検査時の臨床病理学的因子(性年齢発生部位肉眼型組織型病変径深達度)別に累積進展率を比較した.成績:1)累積早期胃癌率:早期胃癌は66ヵ月で50%が進行癌に進展していた.2)臨床病理学的因子別の累積進展率の比較では深達度(M vs. SM)において累積進展率の差を認めた.すなわちSM癌はM癌と比較して有意に進展率が高く進展速度も早かった(p<0.0001M癌→SM癌平均進展期間66.9±4ヵ月。 SM癌→MP癌33.5±7ヵ月).その他の因子別(60歳以上vs.60歳未満隆起型vs.平坦陥凹型分化型癌vs.未分化型癌など)の比較においては累積進展率に差は認めなかったしかし2年以上進展がない病変のうち平坦型では経過中に∬1+Hc型を呈する頻度が高かった(67%:8/12病変).結語:1)認識可能となった胃粘膜内癌は比較的緩徐(6-7年程度)にSM癌へ進展しSM癌に発育すると進展が急速となり2-3年以内に進行癌へ進展すると考えられた.この成績は我々が過去に報告した大腸癌の発育進展(累積早期大腸癌率:60ヵ月で50%が進行癌に進展)と類似していた.2)胃癌の発育進展は多彩でありその初期像から発育進展の推測は困難と考えられたしかし進展が極端に遅い例の中にはm+Hc型を呈する例が多くmalignant cycleが発育進展を遅延させる一因子であることが示唆された.
索引用語