セッション情報 ワークショップ5.

消化管癌の自然史を見直す

タイトル

W5-09 大腸腫瘍の自然史におけるRasシグナル異常-腫瘍局在による異常パターンの違いについて-

演者 原田馨太(岡山大学消化器・肝臓・感染症内科)
共同演者 平岡佐規子(岡山大学消化器・肝臓・感染症内科), 山本和秀(岡山大学消化器・肝臓・感染症内科)
抄録 【目的】大腸腫瘍発生に関与するRasシグナル異常はK-ras変異BRAF変異RASSF(12)メチル化などが知られている.しかしこれらRasシグナルの異常と腫瘍の局在に関する知見は少ない.大腸腫瘍の自然史におけるRasシグナルの異常パターンについて腫瘍の局在による違いを明らかにする.【方法】内視鏡切除により得られた大腸腺腫120検体と外科的切除により得られた大腸癌65検体でK-ras及びBRAFの遺伝子変異t RASsFのメチル化解析を行い腫瘍の局在との関連を検討した.【結果】K-ras/BRAF変異は腺腫で49例(41%)に癌で28例(43%)に認められた.RASSFIメチル化が腺腫3例(3%)癌8例(12%)の少数のみに認められたのに対しRAS5F2メチル化は腺腫30例(25%)癌30例(46%)と比較的高率に認められた.またRA5SF2メチル化を有する腫瘍は高率にK-rns/BRAF変異を伴っていた(腺腫73%癌60%)局在別に遺伝子異常のパターンを検討するとK-ras/BRAF変異とRASSF2メチル化を同時に有す腫瘍は腺腫では盲腸(5/1145%)上行結腸(7/2429%)直腸(6/2327%)で高頻度に見られたが下行結腸(0/90%)S状結腸(3/408%)では極めて低頻度であった(左側結腸オッズ比0.13;95%信頼区間0.03-058).癌においても同様の傾向にあったが直腸では腺腫と同様の頻度(6/2722%)であったのに対し盲腸(5/771%)上行結腸(5/956%)では腺腫と比較して明らかに頻度が高かった(p=0.02).【結論】大腸発癌の自然史においてRasシグナル異常の起こり方は局在により一様ではない.直腸では腫瘍発生早期に右側結腸では後期に起こりやすいのに対し左側結腸ではRasシグナルの関与は少ないと考えられた.
索引用語