セッション情報 ワークショップ5.

消化管癌の自然史を見直す

タイトル

W5-10 大腸発癌過程における側方発育型大腸腫瘍(LST)

演者 杉本貴史(東京大学消化器内科)
共同演者 大田幹(東京大学消化器内科), 小俣政男(東京大学消化器内科)
抄録 【背景】近年内視鏡技術の向上に伴い側方発育型大腸腫瘍(LST)が認識されるようになった.その発育形態は特徴的であり癌化を伴うものも認められている.しかしながらその発癌メカニズムは明らかでなく従来のポリープ型腺腫において提唱されている多段階発癌や陥凹型病変のde novo発癌とは異なる癌化過程である可能性がある.このことを検討するため大腸腫瘍の形態と癌化プロセスの分子生物学的特徴について解析を行った.【方法】2004年8月から2006年8月までに内視鏡的一括切除を行った大腸腫蕩104症例(LST 54例Polypoid 50例)を対象に臨床病理学的特徴と分子生物学的特徴を検討した.パラフィン包埋腫瘍組織からマイクロダイセクション法にて採取した腫瘍細胞のDNAからKRASBRAFPIK3CAの遺伝子変異をシークエンス法で解析した.同組織中のTP53とβカテニンの異常集積を免疫組織化学法により評価した【結果】臨床背景ではLSTはPoly-poid腫瘍に比して有意に女性(40.7%vs 20%P=0.021)右側結腸発生(59.3%vs 26%Pく0001)が多かった.一方でLSTとPQlypoidにKRASBRAFPIK3CAの遺伝子変異頻度やTP53βカテニンの発現パターンに有意差を認めなかった.LSTをLST-G(35例)とLST-NG(19例)の2群にわけて検討した所LST-GはLST-NGに比して有意にKRAS活性型変異の頻度が多く(54.3%vs 21.1%p=O.016)βカテニンの核染色の頻度が少なかった(37.1%vs 68.4%p=α027).この差がLSTの形態差によるのか多変量解析するとK:RASβカテニンとも年齢性別LSTの部位LSTの大きさ癌組織の有無に統計学的有意差はなくKRASでは肉眼型(NG/G)でオッズ比0.22295%CI O056-O.883βカテニンでは肉眼型でOR 4.51295%CI 1.124-18.11と肉眼形態のみがKRASの活性型変異の有無βカテニンの活性状態の有無と相関を示した.【結論】LSTはその形態形成にKRASとpカテニンシグナル系が重要な役割を担っている可能性が示唆され発癌メカニズムを解明する上でも興味深い現象と推察された.
索引用語