セッション情報 ワークショップ6.

Helicobacter感染症研究の進歩

タイトル

W6-11 Helicobacter pylori(HP)感染に対する宿主免疫応答でのTSLPの役割

演者 木戸政博(京都大学消化器内科)
共同演者 渡部則彦(京都大学消化器内科), 千葉勉(京都大学消化器内科)
抄録 HP感染では本来免疫組織でない胃粘膜に相反するようなTh1型とTh2型の宿主免疫応答が起こり各々全く異なる慢性胃炎萎縮性胃炎と濾胞性胃炎が形成されるがその異なる胃炎形成に至る決定機構は明らかではなかった.私達はHP感染によるThl型萎縮性胃炎形成に小腸バイエル板での免疫誘導が必須であることを見いだした。しかし一方で本来免疫組織でない胃粘膜においてどのような宿主側因子が働きTh2型濾胞性胃炎が誘導されるのかは明らかではない.そこで私達はthymic stromal lymphopoietin(TSLP)に着目した.TSLPは上皮細胞から分泌され慢性炎症の場で上皮に強く発現しDCを活性化しCD4 T細胞の炎症性Th2型サイトカイン産生細胞への分化を誘導する【目的】今回の研究ではTSLPのHP感染におけるTh2型免疫応答への関与について検討した.【方法】各種ヒト胃上皮細胞株に各種刺激を加えReal-time PCRELISAにてTSLPの定量発現解析を行った.またこの細胞株の培養上清を用いて末梢血液から精製したDCの活性化誘導とさらにそのDCとCD4 T細胞との共培養iにてTh2型免疫応答が誘導できるかを検討した.【結果】HPは胃上皮細胞に対してTSLPの発現誘導とDCを粘膜局所に誘導しうるケモカインMP3αの分泌を誘導した.そしてこの細胞株の培養上清によりDCの活性化が誘導でき培養上清で活性化したDCとCD4 T細胞を共培養することによりCD4 T細胞の炎症性Th2型サイトカイン産生細胞への分化が誘導可能であった.【結論】HPによって誘導されるTSLPがDCの活性化を介してTh2型免疫応答によって形成される濾胞性胃炎の成立に関与している可能性が示唆された.
索引用語