セッション情報 ワークショップ7.

遺伝性消化管疾患の臨床像と遺伝子変異

タイトル

W7-05 家族性大腸腺腫症の臨床徴候と術後経過に関する検討

演者 中原修(愛知県がんセンター中央病院消化器内科部)
共同演者 田近正洋(愛知県がんセンター中央病院内視鏡部), 中村常哉(愛知県がんセンター中央病院内視鏡部)
抄録 【目的】家族性大腸腺腫症(FAP)に対する手術は時代により大腸全摘・回腸人工肛門造設術大腸全摘回腸旗(嚢)造設術(K㏄k)結腸全摘回腸直腸吻合術(IRA)大腸全摘回腸嚢肛門管吻合術(IPAA)が行われまた大腸病変の大きさ分布密度組織像患者の意向などにより術式が選択されてきたしかしt近年APC遺伝子の変異部位を特定することが手術時期や術式を決定する有用な情報になるとの報告が散見される.今回当施設で経験したFAPの臨床徴候と術後経過から遺伝子診断の可能性について検討した.【方法】対象は1965年から2002年までの間に当施設にて100個以上の大腸腺腫を有し臨床的にFAPと診断され外科手術を受けた70例のうち術後内視鏡的に経過観察が可能であった23家系29例.男性:女性=13:16平均年齢(手術時)=33歳(17-48歳).手術はK:ock;8例IRA:8例IPAA;13例が行われた臨床徴候は術前の大腸癌の有無大腸腺腫数胃ポリポーシスおよび十二指腸腺腫(乳頭部・非乳頭部)の有無術後経過は残存直腸および回腸病変の発生の有無とし術式や臨床徴候との関連を比較検討した.【結果1観察期間は中央値で17年目4.5-30年)経過中2例が死亡した(白血病1例肺炎1例).残存腸管に21例(72%)に腫瘍の再発を認めた.直腸はIRAでのみ6例回腸にはKock;6例IRA;2例IPAA;7例に腺腫の再発を認めたまた癌の発生をIRAで1例Kockで2例認めた残存腸管に腺腫が発生する群(平均観察期間13年)と未発生群(10年)で臨床徴候術式を比較したところ非乳頭部腺腫の有無で傾向を認めた以外(p=0.07)には臨床徴候とは関連を認めなかった.【結論】FAPの術後には残存腸管に腺腫が発生する群と発生しない群を認め癌化例も存在したこれらを事前に把握できれば術後のサーベイランス術式の決定に重要な因子となるが臨床徴候とは関連を認めなかったことからこれに起因する遺伝子変異の同定が期待される.
索引用語