セッション情報 パネルディスカッション21(消化器外科学会・消化器病学会合同)

局所進行膵癌に対する治療戦略

タイトル 外PD21-2:

当教室における局所進行膵癌に対する治療戦略

演者 北郷 実(慶應義塾大・一般消化器外科)
共同演者 田邉 稔(慶應義塾大・一般消化器外科), 北川 雄光(慶應義塾大・一般消化器外科)
抄録 通常型膵癌において根治が期待できる外科的切除後でも5生は15~20%に過ぎず集学的治療が必要である.当教室では術前治療として放射線化学療法(NACRT)と術後補助療法として門注療法(PI)を組み合わせた膵癌の治療を行っている. NACRTの適応は膵外浸潤陽性(JPS T3,T4)症例とし,5-FU 300mg/day(or TS-1 60mg/m2/day) day1-5/w x4w とHeparin 6000U/day day1-28, MMC 4mg/day x1/w x4w, CDDP 10mg/day x1/w x4w, RT 2Gy day1-5/w x4w 計40Gy. 施行した30例中A+ or M+ or P+を認めなかった23例(切除率76.7%)に切除が行われた.20例がR0であり,組織学的治療効果はGrade1a/1b/2a/3がそれぞれ4/13/4/2でpCRを2例経験した.NACRT切除例の局所再発率は17.4%でNACRTを行わなかった切除例の37.4%より低く,5生は53.8%と良好であった.NACRTは局所制御効果による切除断端の陰性化(局所再発の低下)と潜在的遠隔転移症例を顕在化することによる切除適格症例を選択することで良好な成績を得ることができるものと考えられた.さらに切除後の補助療法としてPIを行っている.PIは術直後より5-FU 250mg/dayと Heparin 2000U/day の門脈内持続注入を4週間, MMC 4mg/dayとCDDP 10mg/day を併用投与(x1/w, x4w) するものである.PI(n=64)とnon-PI(n=59)の肝転移率はそれぞれ14.1%と39.0%,5生はそれぞれ49.3%と22.8%で,PIは肝転移を抑制することで全生存期間の延長をもたらすものと考えられた.さらにNACRT切除後にPIを行った症例(n=19)の5生は57.7%とさらに全生存期間の延長が認められた。2010年より多施設共同研究として膵癌切除症例にPI及びゲムシタビンを用いた術後補助化学療法の第II相試験を進めており,現時点で17例が登録されている.今回,当教室における手術・化学・放射線療法も取り入れた局所進行膵癌の治療成績とその集学的治療戦略を報告する.
索引用語 局所進行膵癌, 集学的治療