抄録 |
【目的】高齢化社会食生活の欧米化が進む中わが国でも急激にGERD(胃食道逆流症)患者が増加している.本研究はわが国におけるGERD診療の将来像を予測する目的で広島県北部の高齢化の進んだS町(人口1949名高齢化率40%)で10年間にわたりprospectiveに行われた.【方法】町内唯一の診療所の通院患者380名(平均年齢72歳)を対象にQUEST問診票を用い6点以上であった44名(男性9名女性35名平均年齢74歳)をGERD患者として登録し治療の有効性安全性QOLに及ぼす影響PPIが離脱不能となる因子について調査した.【成績】PPI初期治療のあとstep-down療法を行い患者自身が希望する薬剤を選択した.生活習慣の改善で薬物を離脱するように指導したにもかかわらずPPI継続を希望する患者が着実に増加した【半年後25%(11/44)5年後33%(14/43)10年後47%(16/34)】EHp感染の有無胃の萎縮の程度を示すPG I/H比の違いで大きくPPI継続と薬物離脱の二上に分かれていた.つまり高PG I/ll比群やHp陰性例では超高齢となっても、圧倒的多数がPPI継続を希望し一方低PG I/∬比群やHp陽性例では半数以上が薬物離脱できていた.PPIを中心としたGERD治療は副作用を生じることなくQOLを改善させていた.10例が死亡したがtパレット食道癌や出血といったGERDの合併症PPIによるカルチノイド腫瘍胃癌のマスク肺炎などによる死亡はなかった.最終的にPPIの継続が必要であった21例と離脱可能であった23例の2群に分け解析を行った結果初診時の逆流性食道炎(Odds比16.7)週2回以上の胸やけ症状(Odds比9.0)Hp陰性(Odds比4.6)PGI/H比6以上(Odds比4.0)がPPIが離脱不能となる因子と考えられた.【結論1PPIを中心とする高齢者に対するGERD治療は副作用を生じることなく安全に行え著しくQOLを向上させていた. |