セッション情報 一般演題(口演)

タイトル

036 肝癌における癌蛋白ガンキリンの役割

演者 楳村敦詩(済生会吹田病院・消化器科)
共同演者 伊藤義人(京都府立医大大学院・消化器内科), 岡上武(済生会吹田病院・消化器科)
抄録 【目的】ガンキリン(GKN)はヒト肝細胞癌でRbやp53の不活化に関わる癌遺伝子である(Higashitsuji H et al. Nat MedCancer Ce皿)本研究の目的は肝癌切除標本におけるGKNの発現と臨床的指標・生命予後との関係を明らかにしin vitroでGKN発現抑制の効果を検討することである。【方法】免疫組織化学的方法(IHC)で43例の肝癌切除標本におけるGKNの発現を検討. GKN陽性例と陰性例における臨床的指標・生命予後の差を検討.またGKNの発現とp53・Mdm2の発現との関連についても検討.さらにin vitroでHuh7細胞にsiGKNを発現するレトロウイルス・ベクターを感染させアポトーシスの誘導を検討.【成績】GKN陽性例は陰性例に比し有意にTNM stagel/2が多く(P=0011)被膜浸潤・門脈浸潤・肝内転移が少なかった(P=O.047P=O.040P=0.024)GKN陽性例の生存率は陰性例に対し有意に高かった(log-rank test P = O.037).しかしGKNの発現とp53・Mdm2の発現とは有意な相関を認めずp53・Mdm2の発現と生命予後は関連しなかった.in vitroにおける検討ではHuh7細胞にレトロウイルス・ベクターを用いてsiGKNを発現させると培養4日後の細胞数は有意に減少し(P<0.01)SubG1細胞が増加(4.5%vs.280%)するとともにAnnexin5陽性細胞も増加(2.4%vs37%)した.【結論】1)GKN陽性肝癌は臨床的に悪性度が低く生存率が有意に良好であった.2)p53・Mdm2の発現はGKNの発現や生存率とは相関しなかった.3)GKNの発現は肝発癌過程の初期において抗アポトーシス活性の獲得に関わる重要な役割を果たしている可能性がある.4)肝癌におけるGKNの発現機序を解明することは新たな肝癌進展抑制策につながる可能性が示唆された(本研究は京都大学医学部分子病診療学との共同研究である.).
索引用語