セッション情報 一般演題(口演)

タイトル

039 網羅的DNAコピー数解析による肝細胞癌における癌関連遺伝子の同定

演者 安居幸一郎(京都府立医科大学消化器内科学)
共同演者 全圭夏(京都府立医科大学消化器内科学), 伊藤義人(京都府立医科大学消化器内科学)
抄録 【目的】肝細胞癌(HCC)の発生・進展に関与する遺伝子を明らかにすることを目的に高密度オリゴヌクレオチド・アレイを用いてHCCに生じたDNAコピー数変化を網羅的に探索し特定の染色体領域に生じた新規の遺伝子増幅およびホモ欠失の検出とそれらの標的遺伝子の同定を行った.【方法】HCC細胞株を対象にGeneChip100K(または250K)アレイ(Affymetrix社)を用いてDNAコピー数を定量した.このアレイは全ゲノム領域を高密度にカバーする約12万個(または24万個)のSNP特異的オリゴヌクレオチド・プローブを搭載しており極めて高い分解能で癌に生じたDNAコピー数変化を定量的に解析することができる.増幅領域内の遺伝子についてはFISH(fiuorescent in situ hybridization)法による染色体上での観察とコピー数のカウントを行った.またreal dme PCR法でHCC細胞株と臨床検体におけるゲノムDNA量とmRNA量を定量した.遺伝子の機能解析はsiRNAによるノックダウン法で行った.【成績】新規遺伝子増幅をlp31lq212q313q2617pllなどに暗中ホモ欠失を2p2q3p4p9p18qなどに検出した。このうち17pll増幅領域において.T遺伝子増幅に伴ってその発現と機能が尤進している増幅の標的遺伝子としてMAPK7を同定した.1WAPK7がコードするERK5タンパク質はMAPキナーゼ・ファミリーの一員である且CC細胞株においてERK:5は細胞周期のG2/M期にリン酸化を受け活性型になることを明らかにした. siRNA法でERK5の発現をノックダウンすると細胞周期M期への進行が抑制され細胞増殖能が低下したことからERK:5はM期進行に関与し癌細胞の増殖を促進する可能性が示唆された【結論】高密度オリゴヌクレオチド・アレイによって新規の遺伝子増幅とホモ欠配領域を検出することができた.17pll増幅の標的遺伝子としてMAPK7(ERK5遺伝子)を同定した.本研究のようなゲノム解析は肝発癌の分子機構解明と新たな分子標的治療の開発を加速するものと期待される.
索引用語