セッション情報 一般演題(口演)

タイトル

136 炎症性腸疾患の発症機序におけるマクロファージの関与:macrophage colony stimulating factor(M-CSF)の役割

演者 河野寛(山梨大学第1外科)
共同演者 石井健一(山梨大学第1外科), 藤井秀樹(山梨大学第1外科)
抄録 目的:炎症性腸疾患の発症機序は未だ不明な点が多い.一方マクロファージは貧食能により生体を外的異物侵襲より防御し各種疾患の発症を予防している.今回炎症性腸疾患発症機序におけるmacrophage colony stirnUlating fac-tor(M-CSF)誘導型マクロファージの関与を検討した方法:8週齢の雄性MCS-F欠損op/opマウス(OP)を用いて検討したこのマウスは全身のマクロファージ数が正常マウスの約30%まで減少している.対象(C)群としてlitter-mate(op/?LM)を用いた.飲料水に3%のdextran sulfate sodium(DSS)を添加し8日間自由摂取させ炎症性腸疾患(BD)モデルを作成した.8日後に犠牲死させ近位結腸と遠位結腸を採取し病理組織学的検討を行った.また結腸より蛋白を抽出しIL-12IL-18TNF一αHMGB1の蛋白発現をELISAにて検討した.結腸における活性型マクロファージの分布をF4/80抗マクロファvジ抗体を用いた免疫組織染色で検討した.成績:両目間の体重増加に差を認めなかった.DSS投与によりLM群では粘膜上皮の脱落出血t炎症性細胞浸潤を伴った高度の炎症を認めた.この変化はOP群で著明に抑制されていた.免疫組織染色での検討ではLM群においてOP群と比較し有意にF4/80陽性マクロファージ数が高値であったIL-12TNF一αHMGB1の結腸での蛋白発現はLM群と比較しOP群で有意に出藍となっていた.反対にIL-18の発現はOP群で有意に増加していた.考察:今回M-CSF欠損マウスにおいて消化管の炎症が抑制された検討結果より炎症性腸疾患発症機序においてM-CSF誘導マクロファージは貧食による異物除去過程において活性化され炎症性サイトカインを産生しBD発症に関与する事実が明らかとなった.マクロファージの活性化抑制をターゲットとした治療の可能性が考えられ今後消化管マクロファージ機能とIBD発症との関連を臨床症例で検討を展開していきたい.
索引用語