セッション情報 一般演題(口演)

タイトル

172 ヘリコバクターピロリ空胞化致死毒素(VacA)はSTAT3発現を低下させることでアポトーシスを誘発する

演者 松本章子(長崎大学医学部第2内科)
共同演者 磯本一(長崎大学医学部第2内科), 水田陽平(長崎大学医学部第2内科), 山口直之(長崎大学医学部第2内科), 大仁田賢(長崎大学医学部第2内科), 増田淳一(長崎大学医学部第2内科), 宿輪三郎(長崎大学医学部附属病院光学診療部), 河野茂(長崎大学医学部第2内科)
抄録 【目的】ヘリコバク戸隠ピロリ(以下H.pyloriと略)は慢性胃炎の起炎菌であり消化性潰瘍胃癌やMALTリンパ腫などの発生につながることが報告されている.H.pylori空胞化致死毒素(VacA)はH.pyloriが引き起こす胃粘膜障害の重要な病原因子のひとつである.VacAは標的細胞に対しアポトーシスを誘発するがその詳細な機序は未だ不明である.我々は催アポトーシス分子であるBax/Bakの活性化に基づくミトコンドリア膜透過性急進を報告した.本研究では抗アポトーシス分子Bc1-2ファミリータンパク質やその上流のSTAT3の発現変化がVacA誘発アポトーシスに関与しているかを検討した.【方法】2種類の胃癌細胞株(AZ-521とAGS)に精製VacAを添加し経時的に転写因子STAT3及び抗アポトーシス分子であるMcllBcl-xLBcl-2の発現に変化が見られるかをWestem blotで確認した.STAT3の発現変化がmRNAレベルで変化しているかはreal timePCRで確認した.VacAによるアポトーシスの検:証はFACS及びELISA-basedTUNEL assayで確認を行った.【結果】AZ-521AGS両胃癌細胞株でVacAは時間容量依存性にSTAT3蛋白発現を抑制した.またVacAはSTAT31nRNA levelsを減少させたVacA投与により抗アポトーシスBcF2ファミリー蛋白は3分子とも減少したが特にMcl-1で著減したVacA投与によりFACS及びELISAでアポトーシスが誘発されていることを確認できた.STAT3の活性化阻害剤のAG490の前投与でもtアポトーシスの誘導がみられた.【結論】VacAによりSTAT3の発現がmRNA及び蛋白レベルで抑制されその転写制御下流のBcl-2サブファミリータンパク質が減少することがVacA誘発アポトーシスに関与するものと考えられた.
索引用語