抄録 |
【目的】本邦2006年までのHIV感染者累積報告は12394例と増加傾向で2006年は過去最高の報告数となっており(厚生労働省エイズ動向委員会)日常診療でもHIVの消化管病変と遭遇する機会は増えてくる可能性がある.カポジ肉腫はAIDS関連悪性腫瘍の中で最も頻度が高く内臓病変の中では消化管は好発部位であり海外では消化管合併例は一般的に予後が悪いと報告されている.今回当院での消化管カポジ肉腫の臨床的特徴を明らかにするため検討した.【方法】2003年1月から2007年7月の間に内視鏡的生検による病理診断で確定診断が得られた22例(胃11例十二指腸10例回腸2例盲腸5例結腸8例直腸5例)を対象に患者背景症状多臓器合併の有無内視鏡所見治療治療効果予後をretrospectiveに検討した.【結果】患者背景は平均年齢40.5歳(23-56)全例男性感染経路はhomosexua1が11例と最も多く診断時のCD4数は200以下が77%200以上が23%であった.症状は8割無症状で2割に消化器症状を認めた.便潜血化学法は上部消化管の検討で17%陽性免疫法は下部消化管の検討で30%陽性と低率であった多臓器の合併は皮膚が77%と最も多く内臓ではリンパ節60%肺が10%消化管のみは18%であった.内視鏡は22例中19例に上下部内視鏡を施行し部位局在性はなく全消化管に認めt多発傾向を示し大きさは5mm以下から30mm以上とさまざまであった.肉眼形態は隆起主体で色調はほぼ全例で鮮やかな発赤調を呈し生検による診断率は82%であった.治療はHAART(抗HIV療法)liposornal doxorubicinまたはそれらの併用で行われ効果は内視鏡でfbnowできた12例中10例で病変縮小2例不変.平均観察期間33ヶ月で死亡は22例中2例のみであった【結論】消化管カポジ肉腫は無症状例や便潜血陰性例が多くを占め内視鏡検査が発見の契機になる場合もある.内視鏡所見は特徴的で診断は容易であり病理学的に証明される率も高い消化管病変を有する場合でも適切な診断と治療により比較的予後が良好であると考えられた |