セッション情報 一般演題(口演)

タイトル

264 持続感染機構と増殖機構の阻害を意識した新たなC型慢性肝炎の治療

演者 井上和明(昭和大学藤が丘病院消化器内科)
共同演者 渡邊綱正(昭和大学藤が丘病院消化器内科), 与芝真彰(昭和大学藤が丘病院消化器内科)
抄録 【目的】近年C型肝炎ウイルスは感染後にIFN一βの誘導を抑制して持続感染を成立させていることが明らかになった.また近年増殖系の検討から増殖に宿主因子のサイクロフィリンが必須であることが明らかになった.我々は導入療法と強化療法にIFNβの分割投与とサイクロスポリンAを組み合わせた治療により自然免疫系の回復をはかると同時に宿主因子のサイクロフィリンを標的とする治療を行うことにより高率のSVRを得た.このコンセプトが将来の治療の方向性を示唆していると考え報告する.【対象と方法1対象は慢性C型肝炎70例である(男性45例女性25例平均年齢61才).血中のウイルス量は1600KIU/mlで全例genotypelbであった.導入療法はIFNb6MUを一日6分割3日一日4分目4日一日3分割をその後3週間実施した.その後維持療法としてペグインターフェロンとリバピリンの併用を約3ヶ月行いその後強化療法として導入療法を2週間に短縮した治療を行い強化治療後は前述の維持療法を行い全治療期間は1年とした.【成績】導入治療の結果58/70(82.9%)でウイルスの消失を認めた次の維持療法中に6例でウイルスが消失したが3例では導入療法中にいったん消失していたにもかかわらず再出現し強化療法を開始する時点では61/70(87.1%)でウイルスが消失していた.強化療法の結果63/70(90%)でウイルスが消失し治療終了時のETRは62/70(88.6%)であった.治療後6ヶ月後のSVRは47/70(65.8%)であった.治療を中止したのは2例でありその原因は腎障害と高血圧であった.有害事象としては22例にmildな網膜症を認め5例に腎障害を認めたさらに1例には高血圧を認めたがこれらの有害事象から全例後遺症なく回復した.【結論】ウイルスの持続感染機構を阻害しIFNと別経路でもHCV増殖を抑制する本治療法は通常治療より抗ウイルス効果を増強しうる可能性が示された.IFNβとサイクロフィリンインヒビターの組み合わせば今後の有望な治療となる可能性が示された.
索引用語