セッション情報 パネルディスカッション21(消化器外科学会・消化器病学会合同)

局所進行膵癌に対する治療戦略

タイトル 外PD21-5:

T4局所進行膵癌に対する治療戦略

演者 羽鳥 隆(東京女子医大・消化器外科)
共同演者 奥山 隆二(東京女子医大・化学療法・緩和ケア科), 山本 雅一(東京女子医大・消化器外科)
抄録 【はじめに】局所進行膵癌である膵癌取扱い規約のT4膵癌では切除不能と判断されることも少なくなく,切除可能でもresectable膵癌とborderline resectable膵癌があり,各々の治療戦略を立てる必要がある.そこで,T4膵癌の治療成績について両者に分けて検討した.【方法】2000-2011年の肝転移,腹膜播種のない膵癌切除例378例の内,T4であった231例を対象とした.NCCN 2012のborderline resectable膵癌の定義の内,PV/SMVの閉塞を認めるが再建可能,肝動脈に及ぶが腹腔動脈に及ばない,SMAに180°以下で接する例をborderline resectable膵癌(50例)とし,これ以外のPV/SMVの片側性狭窄やSMAと接しない等をresectable膵癌(181例)として検討した.なお,borderline resectable膵癌では非切除16例も追加した(計66例).【結果】1)resectable膵癌:Stage IVaが128例(71%),Stage IVbが53例(29%)であり,MSTは各,25.6ヵ月, 16.8ヵ月とStage IVaがIVbよりも良好であった.R0率は70%でR0のMSTは25.9ヵ月でR1の17.1ヵ月より良好であった.術後補助療法施行例は134例(74%)で,化学療法でMSTが26.3ヵ月,免疫療法で20.5ヵ月,補助療法なしで15.8ヵ月と補助化学療法例で良好であった.また,VEGFR1,2とGEMを併用した術後補助免疫化学療法の3例は全例無再発生存中(13-17ヵ月)であった.2)borderline resectable膵癌:術前治療せずに切除した44例では,Stage IVaが38例(86%),Stage IVbが6例(14%)であり,MSTは各,20.6ヵ月, 18.4ヵ月と差はなく,R0率は59%であった.術後補助療法は化学療法でMSTが20.6ヵ月,免疫療法で18.6ヵ月,補助療法なしで16.1ヵ月と差はなく,免疫化学療法の4例は全例生存中(11-31ヵ月)であった.一次治療に化学放射線療法(CRT)を施行した22例中,非切除の16例のMSTは15.6ヵ月,CRT後に切除した6例(PR 83%,SD 17%)のR0率は100%で,全例生存中(10-35ヵ月)であった.【結語】T4局所進行膵癌ではresectable膵癌は切除と補助(免疫)化学療法を行い,borderline resectable膵癌は一次治療としてCRTを行い,PRまたはSDなら切除を行うべきと考えられた.
索引用語 膵癌, 集学的治療