セッション情報 一般演題(口演)

タイトル

340 激しい腹痛で発症し偽性腸閉塞を合併した汎発性帯状疱疹の一例

演者 谷田恵美子(町田市民病院内科)
共同演者 和泉元喜(町田市民病院内科), 内山崇(町田市民病院内科), 澤邉文(町田市民病院内科), 細野邦広(町田市民病院内科), 光永眞人(町田市民病院内科), 阿部剛(町田市民病院内科), 白濱圭吾(町田市民病院内科), 金崎章(町田市民病院内科)
抄録 帯状庖疹には皮疹を初発症状とせず内臓に播種し重篤化する汎発例がある.今回激しい腹痛を初発症状とし数日後に全身に小水庖を播種性に認め偽性腸閉塞も合併した汎発性帯状庖疹の一例を経験したので報告する.【症例】42歳男性.他院で急性骨髄性白血病に対して同種骨髄移植を施行後GVHDに対してFKsO6 1.5mgとPSL 5mgを服用していた.移植後154日掛右上腹部痛嘔吐を認め3日後に当院救急外来を受診腹部は腸雑音を聴取し平坦で軟右上腹部に圧痛を認めたが反跳痛や筋性防御はなかった.血液検査に異常を認めなかったがペンタゾシン投与で軽減しない腹痛であったため入院となった.腹部超音波上部消化管内視鏡検査で異常を認めなかったが入院後に腹部が膨満し腸雑音が低下した腹部単純XpとCTで小腸と大腸の拡張を認めた.大腸鏡検査では粘膜面に異常を認めなかった.入院3日目に水痘様の小水庖が全身に出現したが帯状庖疹に特徴的な神経支配領域に沿った水縄は認めなかった.病歴から内臓播種性の汎発性帯状下平結腸の拡張は水痘帯状庖疹ウイルス(VZV)感染による偽性腸閉塞と診断.アシクロビル(ACV)1500mgとγグロブリンの投与を行った結果引導腸管拡張腹痛は消失した.水霜内容液にVZV抗原が確認された.【考察】VZV感染症は同種骨髄移植後17-52%にみられその中で5-15%は内臓播種性を呈する.その場合に死亡率は約55%と報告されている.内臓播種性では初診時に腹痛のみで皮疹を認めない例がある.ACV投与が遅れると髄膜炎多臓器障害に進行するため早期の治療が必要である.本症例のような免疫不全の背景をもつ患者で原因不明の激しい腹痛や腸閉塞像を認めた場合は汎発性帯状庖疹を念頭に置き早期の治療開始が重要である.
索引用語