セッション情報 一般演題(口演)

タイトル

353 大腸亜全摘後21年目に十二指腸癌を発症した家族性大腸腺腫症の一例

演者 日向理(山梨大学第一外科)
共同演者 飯野弥(山梨大学第一外科), 三井文彦(山梨大学第一外科), 森義之(山梨大学第一外科), 岡本廣挙(山梨大学第一外科), 藤井秀樹(山梨大学第一外科)
抄録 【はじめに】家族性大腸腺腫症(FAP)の十二指腸乳頭部癌の相対的危険度は高く大腸全摘後の予後因子として十二指腸病変の取り扱いが課題となっている.定期的な内視鏡によるサーベイランスは重要であるが病変の評価や内視鏡的治療の可能評価も複雑であり治療方針の決定は難しい.今回我々は大腸亜全摘後21年目に発症した十二指腸癌の症例を経験したので報告する.【症例167歳の女性.1986年にFAPにて大腸亜全摘術が施行されている術前の内視鏡検査では胃に多発する過形成ポリープを認めたが十二指腸に病変は認めなかった1994年には残存直腸に癌再発を認めたために経肛門的腫瘍切除術が施行され以後は外来にて定期的な大腸内視鏡検査を行い適宜ポリペクトミーが施行されていた.1998年の内視鏡検査では十二指腸に異常は認めていなかったが2007年の内視鏡検査にて上十二指腸角部に8mmの平坦隆起型ポリープを認め生検にて腺癌が強く疑われたためにEMRを施行し高分化型腺癌と診断された切除断端の評価が困難でありまた十二指腸に腺腫様ポリープが多発していたことから追加治療として膵頭十二指腸切除術を施行した病理診断では大きさ6mmの高分化型腺癌の残存があり進達度はmであった.また十二指腸には腺腫が広範囲に多発していた【考察】FAPは発生頻度が1万人に1人程度の常染色体優性遺伝性疾患(染色体5q21)である.放置すれば60歳までに90%が大腸癌に罹患するとされている.治療的あるいは予防的大腸全摘術が行われ予後が改善している一方で術後に大腸以外の疾患の発症が予後に関与するようになった.特に十二指腸癌は大腸癌に次いで重要な予後因子といわれFAP症例の十二指腸癌の相対危険度は200~300倍と報告されている.十二指腸病変の治療法としてはEMRやアルゴンプラスマ凝固療法も有用と思われその適応の拡大が望まれている.外科的治療では経十二指腸的切除膵頭温存十二指腸切除または膵頭十二指腸切除が選択される.
索引用語