抄録 |
【目的】近年わが国における急速な高齢化とともに高齢の胃癌症例に遭遇する機会が増加している.胃癌治療の中心は切除術であるが治療効果を期待する半面手術侵襲が問題となることも多い.そこで今回高齢胃癌切除術症例の検討をおこなった.【対象と方法】1985~2006年目胃癌にて胃切除術を施行された800例のうち80歳以上の88例(11.0%)を対象とした.85歳未満のA群(57例)と85歳以上のB群(31例)の2群に分け病理所見(占拠部位・組織型・病期)・手術(手術目的・術式・根治度)・合併症・予後に関して検討をおこなった.【結果】病理所見では両眼とも中部~下部(A群39例(68.4%)・B群26例(83。9%))の分化附田(A群33例(57.9%)・B群23例(742%))が多かった.病期1が半数以上を占め(A群29例(50.9%)・B群19例(61.3%))病期IV(A群13例(22.8%)・B群5例(16.1%))がそれに続いた.手術に関しては根治度ABがA群40例(702%)・B群21例(67.7%)で両州間に差は認められなかった.合併症は肺炎(A群10例(17.5%)・B群6例(19.4%))と吻合部狭窄(A群12例(21.1%)・B群5例(16.1%))が多く認められ吻合部狭窄が肺炎の一因と考えられたのはA群5例(&8%)・B群2例(6.5%)であった.合併症による手術関連死はA群で4例(7.0%)・B群で4例(129%)であったがA群の4例中2例・B群の4例全例が肺炎によるものであった.予後は根治度Cに限るとB群(平均生存期間488±120日)はA群(平均生存期間163±36日)よりも有意に不良であった(p=0.0337)が根治度ABにおいては差を認めなかった.【結語】高齢胃癌症例に対して胃切除術は肺炎を中心とした合併症による手術関連死を十分に危惧した上で施行すべきである.特に根治度Cの姑息手術は超高齢になるほど効果が少なく切除術以外の治療も考慮すべきである. |