セッション情報 パネルディスカッション21(消化器外科学会・消化器病学会合同)

局所進行膵癌に対する治療戦略

タイトル 外PD21-9:

放射線温熱化学療法を駆使した局所進行膵癌に対する集学的治療

演者 村上 真(福井大・1外科)
共同演者 片山 寛次(福井大附属病院・がん診療推進センター), 山口 明夫(福井大・1外科)
抄録 【はじめに】膵癌の切除成績は,術式と化学療法の進歩により近年改善している.これには画像診断技術の向上による切除症例選択の結果も関与し,膵癌の切除率は未だに低い.我々は,局所進行膵癌でR0切除不能症例にバイパス手術と放射線温熱化学療法を行い,良好な結果を得たので報告する.【目的】術中術後に集学的治療を駆使することで,無用な切除を減らし,術後成績を向上するのみならず,非切除でも延命とQOLの改善を図る.【対象】術中診断で肝転移,腹膜転移を認めず,局所的にR0手術が不可能と考えられ,針生検で浸潤性膵管癌と診断された症例【方法】術中照射を25Gy後,胆管空腸吻合,胃空腸吻合術を行い,腹壁直下に腫瘍を置くことで安全かつ効果的な術後照射とRF加温が可能である.術後加温用温度センサー用盲端チューブを留置.術後5FU持続に加えて体外照射直後にCDDP静注とRF加温を行う.これを週1回計4回行う.術後化学療法:JEM,1000mg/m2を隔週2回とS1内服2週1休計3週を3クール施行する. 【結果】集学的治療は,39症例に行った.24例で43℃以上の加温を得た.64%でPRを得た.90%で疼痛の軽減,79%で腫瘍マーカーが50%以上低下,49%で正常化した.頭部癌ではR0/1, R2切除のMSTは,22.4M, 13.2Mであったが,非切除集学的治療32症例では14.0Mであり,2例の5生を得た.尾部癌ではR0/1, R2切除のMSTは,36.0M, 11.2Mであったが,非切除集学的治療7症例では24.0Mであり,有意にR2切除より延命した.【考察】術中所見にて治癒切除が可能と考えられる場合は積極的に治癒切除を目指して切除を行う.術中明らかに治癒切除不能ならあえて切除せず,バイパスを含む集学的治療で非治癒切除より良好なQOLと延命が期待できると考える.【結語】局所浸潤による切除不能膵癌に対する手術と術中照射、温熱化学療法、体外照射を組み合わせた集学的治療は有効であり、生存期間の延長も得られた。今回の検討により、治癒切除が不可能な症例においてはあえて切除を行うより、集学的治療を行うべきであると考えられた.
索引用語 膵癌, 集学的治療