セッション情報 一般演題(ポスター)

タイトル

P254 胃・十二指腸潰瘍穿孔症例のフォローアップ:穿孔体質の可能性と除菌治療は再穿孔予防に有効か?

演者 加藤俊二(日本医科大学外科)
共同演者 松倉則夫(松倉中央クリニック), 山初和也(日本医科大学外科), 奥田武志(日本医科大学外科), 藤田逸郎(日本医科大学外科), 木山輝郎(日本医科大学外科), 田尻孝(日本医科大学外科)
抄録 【緒言・対象】胃酸分泌抑制剤の出現により上部消化管穿孔症例数は減少しているがなお一定の数で存在し最近はその発症年齢が広汎かつ原因もさまざまである.穿孔治療は保存的もしくは大網充填術(OP)+腹腔内ドレナージと臓器温存術式が一般的となっている.再穿孔した4例示すとともに十二指腸潰瘍(DG)穿孔と非穿孔例の胃粘膜サイトカイン等の発現をmRNAレベルで測定し背景の違いや宿主因子の関与Hlpylcri除菌治療を含めた個別化治療の可能性を検討した.【症例】再穿孔例は除菌なし維持療法なし1例除菌後維持療法なし1例胃潰瘍穿孔で幽門側胃切除後Hpyloriは自然消失し維持療法なし1例H.pylori陰性で維持療法あるもNSAIDs投与による穿通性潰瘍1例であった.【背景胃粘膜の検討方法と結果】遺伝的に胃酸分泌や胃癌と関係するtt-1β多型と前庭部胃体部より生検した粘膜内IL-1βIL-8COX-2潰瘍修復にも関与する摂食ホルモングレリン発現をDG穿孔20例と非穿孔14例で検討した.胃酸分泌能が正常なIL-1βの一31CCタイプは穿孔例で1例もなかった.NSAIDsが阻害する潰瘍修復に必要なCOX-2発現はH.pylori感染に伴い増強するが穿孔例では感染の有無に関わらず非穿孔例より低く(27±1.8vs 17.0±9.2 p=OD59)発現の個体差があった.穿孔例では除菌後でも胃体部グレリン発現が低いなどDG体質(やせ)に関連する可能性があった.【結論と考察】除菌治療によって胃・十二指腸潰瘍再発はかなり防げるが除菌が必ずしも再穿孔の予防に結びつかないことを示しているH.pylori ma染に伴う胃粘膜におけるIL-8やCOX-2発現増強は粘膜障害に対する潰瘍修復のための合目的生体反応と考えられる.胃粘膜を含む全消化管の粘膜障害物復に重要なCOXおよびプロスタグランディン産生能に個体差がある点IL-1β遺伝子多型にみられる胃酸分泌能の個体差はNSAIDs潰瘍発生の原因になる可能性が考えられた.
索引用語