抄録 |
進行胃癌は予後不良の疾患であり現在TS-1をはじめとする様々な化学療法が検討されている.胃癌に対する化学療法の効果の指標としてCEACA19・一9などの腫瘍マーカーが知られているが血中シフラ値についての報告は稀である.今回われわれは進行胃癌に対し胃痩からのTS-1投与が有効であり化学療法施行中血中シフラ値が特徴的変動を示した症例を経験したので文献的考察を含め報告する.症例は75歳男性.心房細動にて当院通院中であったが平成19年4月初旬頃より食後のつかえ感と背部痛が生じ当科紹介となった.上部消化管内視鏡検査を施行したところ噴門部から目窪部にかけて3型胃癌を認め浸潤により食道胃接合部は狭窄していた.CTでは肝転移リンパ節転移脾臓・膵臓への浸潤を認めた.腫瘍マーカーはCEACA19-9は正常であったがシフラは18ng/mlと上昇を認めた内視鏡的胃旗造設を行った後胃痩からのTS-180mg/body投与を導入した.1クール終了後原発巣肝転移リンパ節転移ともに縮小し血中シフラ値も3.9ng/mlと低下していた.2クール終了後も転移巣原発巣はともに縮小傾向で飲水時つかえ感疾痛の改善を認めたが血中シフラ値は9.6ng/mlと上昇していた.腫瘍マーカー以外は改善傾向であり3クール目を施行した.3クール終了後再度評価を行ったところ肝転移増悪腹水の出現を認めPDと判定した。シフラは19ng/mlとさらに上昇を認めた.以後患者様の強い希望にて在宅にてbest supportive careを行うこととなった.本症例ではTS-1投与により血中シフラ値の低下を認めその後画像にて進行をとらえる前に再上昇を認めた.シフラは胃癌化学療法施行時の鋭敏な腫瘍マーカーとなりうる可能性が考えられた |