セッション情報 パネルディスカッション21(消化器外科学会・消化器病学会合同)

局所進行膵癌に対する治療戦略

タイトル 外PD21-10:

陽子線治療を用いた局所進行膵癌に対する新規治療戦略

演者 松本 逸平(神戸大・肝胆膵外科)
共同演者 村上 昌雄(兵庫県立粒子線医療センター・放射線科), 具 英成(神戸大・肝胆膵外科)
抄録 【背景】陽子線は近年多様な腫瘍で良好な治療成績が報告されている。我々は膵癌に対して段階的に陽子線治療を導入してきたので成績を報告する。【1. 第I / II相試験】Stage IVa膵癌18例(PR1, BR7, UR10例)に40-50GyEの粒子線照射を行った。17例(94%)で治療を完遂し、有害事象はGrade 2 までの血液毒性、Grade 3までの消化管毒性であった。治療効果がPRの2例で切除を行い、pStage III膵癌、pStage IVb胆管癌と診断した。2例とも5年以上無再発生存中である。しかしdown stageによる切除例はなかった。【2. スペーサー留置】より高線量の照射を可能にするため、スペーサー(ゴアテックスシート)で消化管の被爆を低減する試みを行った。切除不能局所進行膵体尾部癌7例に対し、手術で計画標的体積内の消化管を排除するようスペーサーを留置したのちに陽子線治療(64-80GyE/8-26Fr)を行った。Grade3以上の毒性は認めなかった。局所の治療効果はPR3例、SD4例で、中央生存期間は11ヶ月、6例は遠隔転移で死亡し、1例は30ヶ月後に局所再発を来したが36ヶ月現在生存中である。【3. GEM併用陽子線治療】2009年7月より兵庫県立粒子線医療センターで局所進行切除不能膵癌に対しGEM (800mg/m2)併用陽子線治療(67.5GyE/25Fr)を開始し、当施設より12例を登録した。局所の治療効果はPR4例、SD7例、PD1例で、生存期間中央値は37ヶ月であった。【症例提示】SMA周囲神経叢浸潤をともなう局所進行切除不能膵頭部癌の63歳女性。GEMによる化学療法6コース後にGEM併用陽子線治療を行い、以後GEM投与を継続した。治療開始後26ヶ月で局所再発を来し、門脈閉塞から肝不全に陥り37ヶ月で死亡した。病理解剖では膵頭部に高度の線維化・硝子化と索状・小胞巣状の腺癌の浸潤を認めたが、遠隔転移巣は認めなかった。【まとめ】膵癌に陽子線治療を段階的に導入し、局所制御は比較的良好であった。さらなる成績向上のため、新たな照射プログラムや集学的治療の開発などが今後の課題である。
索引用語 膵癌, 陽子線治療