抄録 |
【はじめに】腸管嚢腫様気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis以下PCI)は小腸結腸の腸管壁内に多量の気体を認める徴候で種々の病態から発生し得る.単一の疾患ではないが稀な病態である.今回腹痛を契機に発見され腹腔内遊離ガスを伴うため消化管穿孔を疑われたが保存的に軽快したPCIを経験したので報告する.【症例】80歳男性.家族歴に特記すべきこと無し。既往歴糖尿病高血圧2週間前より腹痛食欲不振便秘のため近医にて整腸剤処方を受けていたが改善なく別の医療機関を受診CTで腹腔内遊離ガスと腸管壁内ガスを認め当院紹介となった.消化管手術及び検査は行われていない.【身体所見】腹部は平坦軟腹痛や圧痛はない【画像所見】空腸の漿膜下腸間膜内及び腹腔内にairが存在小腸は虚脱傾向にあり通過障害や腹水腸間膜肥厚血行障害を示唆する所見は認めない.【検査所見】WBC 6650/cmmCRPα19mg/dl RA因子(+)抗核抗体(一)抗DNA抗体(一)抗RNA抗体(一)IgAJgGJgMいずれも正常範囲【経過】絶食で経過観察自覚症状無く炎症所見に乏しいため入院6日目より経口摂取開始.2週間後のCTで気腫は減少し全三食摂取して無症状であるため退院となった.さらに4週間後CTで気腫の消失を確認した.【考察】本症例は比較的軽微な腹痛を契機に発見され気腫の原因及び合併疾患の明らかなものは無く絶食と通常の維持輸液のみで軽快した.報告ではPCIには保存的治療で改善する軽症例と壊死性腸炎等の重篤な疾患に合併する重症例が存在する.比較的重篤となった切除例では腸管気腫を粘膜下層に認めている軽症例は様々な契機が推測されているが多くの場合原因は不明である.X線検査等で偶然発見される無症状の場合が多く気腫は腸管壁の漿膜下層に認められており本症例はこれに当たる.【結語】腹腔内遊離ガスを伴うため重症化を懸念したが絶食のみで軽快したPCIを経験した. |